離散コミュニティー、つなぐSNS=避難前にグループ立ち上げ―塩作り誇りの集落・石川珠洲
![石川県珠洲市仁江地区の住民によるLINEグループをつくった中谷久雄さん=1月30日、同市](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240212at01S_p.jpg?updated=1707649339)
能登半島地震で大規模な土砂崩れが発生し、犠牲者も出た石川県珠洲市仁江町。住民は県内外に離散し、「もう住めない」と移住を検討する人も多い中、避難前につくったSNSのグループがコミュニティーを維持する頼みの綱となっている。それでも、地区のまとめ役は「いつまでつながれるか。先が見えない」と不安を漏らす。
「祭りに塩田の手伝いにと、まとまりのいい集落だったが」。仁江地区の区長中谷久雄さん(68)は、様変わりした集落を自宅から見つめた。伝統の「揚浜式塩田」のため水をくみ上げていた海岸は海底の隆起でなくなり、すぐ隣の家をのみ込んだ裏山の土砂崩れは、集落中心部に迫る。
地震による道路崩落で地区は一時、完全に孤立し、23世帯の住民と帰省中の親族ら約80人は集会所に身を寄せた。湧き水と持ち寄った各家庭の正月料理でしのぎ、隆起した岩に張り付いた貝も捕って食べたという。
3日ほどで救助が来たが、住民は親族宅や県外の温泉などに離散した。「会えなくなるかも」と心配する声に応え、LINEグループがつくられた。「スマホがない高齢者は息子や娘の番号で。とにかくつながりを確保した」と中谷さん。「仁江町LINE集会所」と名付けたグループには住民ら34人が登録する。
書き込まれるのは避難の近況や不明者の捜索状況など。慣れない生活で、心の支えだという。取材時には、「明日は天気がいいので片付けに行く」というコメントを見て、「では私も」と訪れた数家族が集会所で久々の再会に話を弾ませていた。
ただ、中谷さんの質問投稿に「住み続ける」と答えたのはわずか2人。集会所でも「寂しいが、いつまた崖が崩れるか不安でとても住めない」「移住する。LINEでつながりたまに集まれれば」という声が聞かれた。
「このままでは地区は確実になくなる」と話す中谷さんは、「東日本大震災では集団移転があったが、能登ではまだその意向調査すらない」と危機感を募らせている。
[時事通信社]
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