妻子亡くした男性「悔しい」=ビル倒壊、救出かなわず―長女は20歳目前・能登地震
![成人式前に撮った長女珠蘭さんの写真を収めたアルバム=1月28日、石川県輪島市](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240210at41S_p.jpg?updated=1707529332)
石川県輪島市の楠健二さん(55)は、元日の能登半島地震で倒壊したビルに自宅兼店舗が押しつぶされ、妻由香利さん=当時(48)=と長女珠蘭さん=同(19)=を亡くした。「本当に悔しい」。珠蘭さんは1月5日に20歳の誕生日を控え、成人式を楽しみにしていたという。
健二さんは妻と子ども4人の6人家族。6年前、川崎市から輪島市に移住、居酒屋を経営して生計を立てていた。看護学校に通う珠蘭さんら子ども2人は離れて暮らしていたが、「パパとママが大好き」という珠蘭さんは正月を一緒に過ごすため、元日は輪島市に滞在。健二さんは「いつも家族一緒で仲が良かった」と振り返る。
3階の自宅で由香利さんの作った雑煮とおせちを食べて一息ついていた時、1回目の揺れを感じた。由香利さんが「2回目が来るから」と避難の準備をしていると、本当に激しい揺れが襲った。健二さんは後頭部に強い衝撃を受け、気を失ったという。
飼い犬の鳴き声で気が付くと、階下には物が散乱していた。「とんでもないことになっていた」。次男(21)と次女(18)を何とか安全な場所に引っ張り出したが、由香利さんと珠蘭さんはがれきに挟まれ、動けないでいる。名前を呼ぶと、由香利さんは1度だけ手を上げた。
「背中が痛いよ」「パパ、喉が渇いた」。そう求める珠蘭さんに水を飲ませ、「待ってろ。今出してやるから」と声を掛け続けた。のこぎりやジャッキを使って助け出そうとしたが、大きながれきや木に阻まれ、どうすることもできない。消防隊に救出された時には、2人は既に息を引き取っていた。
珠蘭さんは、成人式で由香利さんと選んだ振り袖を着るのを楽しみにしていたという。倒壊した自宅の中で見つかった、式前に撮った写真を見詰めた健二さん。「2人で酒を飲もうと思っていたのに。好きなものを買ってやりたかった。朝起きたら夢であってほしい」と目を潤ませた。
[時事通信社]
![倒壊したビルに押しつぶされた自宅で見つけたコップを手にする楠健二さん=1月31日、石川県輪島市](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240210at37S_p.jpg?updated=1707529332)
![倒壊したビルに押しつぶされた自宅で、家族の思い出の品を探す楠健二さん=1月31日、石川県輪島市](https://img.sp.m.jiji.com/image/out/20240210at42S_p.jpg?updated=1707529332)
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