子どもの平日休み方改革=「ラーケーション」じわり拡大―家族と体験学習、観光振興も
児童生徒が保護者の休暇に合わせて平日に学校を休める「ラーケーション」制度が徐々に広まっている。子どもが家族と過ごす時間を増やし、主体的に体験学習することが目的で、観光を促す狙いもある。愛知県と大分県別府市が昨年9月に導入。来年度には茨城県や栃木県日光市なども始める。ただ、学習の遅れを懸念する声もあり、名古屋市は愛知県内で唯一、制度導入を見送った。
ラーケーションとは「ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」を合わせた造語。愛知県が提唱した。公立小中学校や高校などが対象で、児童生徒は年に最大3日休むことができ、保護者が事前に学校に届け出れば欠席扱いとしない。
名古屋市を除く県内53市町村が賛同し、2学期から順次導入。例えば、バイオリン工房で製造工程を見学したり、国会見学したりする事例があった。大村秀章知事は今月下旬の記者会見で「子どもたちの視野が広がる」と手応えを見せた。
茨城県は4月から全ての県立高校と希望する公立小中学校などで年5日まで取得を認める。保護者が事前申請するが、高校生らは保護者と一緒に活動する必要はない。体験や探究に加え、自分の生き方を見詰め直す機会とすることも重視する。担当者は「人工知能(AI)の台頭で知識や技能が中心だった学びの変化が必要になっている。体験、探究活動は今まで以上に重要で、社会と接点を持つことで成長してもらいたい」と語る。
都道府県では熊本県なども導入を検討中だ。
市町村では、大分県別府市が愛知と同じ昨年9月から導入。特徴は市外への家族旅行を条件とする点で、「旅」と「スタディー(学習)」を合わせ「たびスタ」休暇と名付けた。温泉で有名な同市には土日や祝日が忙しい観光業に従事する保護者が多いため、平日家族と過ごす時間を確保。市は「机に座ってするだけが学びではない。旅を通じた経験は成長のプラスになるのではないか」(担当者)としている。
観光が基幹産業の栃木県日光市と沖縄県座間味村も、別府市を参考に来年度からの導入を決めた。いずれも平日家族と過ごすことが目的で、旅行や映画鑑賞など自由に活動できる。
一方、愛知県内で唯一導入を見送った名古屋市は来年度も導入しない方針。担当者は「家庭の事情で休みを取れる子と取れない子が出てくることと、学習保障の対応がはっきりしていないことが課題だ」と指摘する。ラーケーションを推進する全国知事会にも教育現場から懸念の声が届いており、知事会幹部は「取り組みを広げるには学校関係者の理解や協力が必要だ」と強調する。
[時事通信社]
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