クリムト晩年の作品、約100年ぶり公開 オーストリア
【ウィーンAFP=時事】オーストリアの画家グスタフ・クリムトの晩年の作品で、1925年以来実物が確認されていなかった肖像画が25日、ウィーンで公開された。≪写真はウィーンで公開されたクリムトの絵画「リーザー嬢の肖像」≫
作品はクリムトが亡くなる直前の1917年に、裕福なユダヤ人実業家リーザー家の依頼で描かれた「リーザー嬢の肖像(Bildnis Fraeulein Lieser)」。1925年にウィーンの展覧会に出展されて以来、その存在は1枚の白黒写真でしか知られていなかった。
ウィーンの競売会社キンスキーによると、ナチス・ドイツによって没収された美術品の返還について定めた「ワシントン原則」に基づき、現在のオーストリア人所有者とリーザー家の法定相続人の意向で、4月に競売に掛けられる。
残されていた写真によると、リーザー家の中でこの絵を最後に所有していたヘンリエッテ・リーザー氏はナチスの侵攻にもかかわらずウィーンにとどまり、1942年に強制移送され、翌43年、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所で殺害された。
現在の所有者が相続前に美術法を専門とする弁護士エルンスト・プロイル氏に法的助言を求めたことで、再び表舞台に出てくることとなった。
■ナチス押収の形跡はなし
広範な調査にもかかわらず、1960年代に現所有者の手に渡るまでの経緯は不明なままだ。
プロイル氏は1925年から1960年代まで空白期間があるが、第2次世界大戦の前後に略奪されたり、盗まれたり、不法に押収されたりした形跡はないと強調した。
同氏によると、ナチスに押収されていた場合には、絵の裏側にナチスの秘密警察ゲシュタポのスタンプが押されているが、「スタンプもステッカーも一切ない」という。
キンスキーでは落札価格を3000万~5000万ユーロ(約48億~80億円)と予想している。しかし、クリムトの作品が市場に出回ることはまれで、最近の落札傾向から考えればさらに高額もあり得るという。【翻訳編集AFPBBNews】
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