不動産不況が長期化=デフレ懸念、募る危機感―中国
2023年の中国経済成長率は5.2%と、政府目標の5%前後を達成した。好調に見えるが、コロナ感染拡大に伴い低迷した前年からの反動増という側面が大きい。消費者物価指数の伸び率はわずか0.2%と、14年ぶりの低水準に落ち込み、デフレ懸念が強まっている。不動産不況が経済に影を落としており、政府は危機感を募らせている。
◇止まる建設工事
1月初旬、中国貴州省北部の遵義市では、至るところでマンションの建設工事が止まっていた。「ここの政府はお金がないんだ」。タクシー運転手は声を落とした。市街地には巨大なプールや競技場が立ち並ぶものの、いずれも「ほとんど利用されていない」(運転手)という。
行き詰まりのきっかけは不動産不況に伴う財源不足だ。不動産開発事業者への土地使用権売却収入は地方政府の主な財源だが、23年1~11月は前年同期比17.9%減の4兆2031億元(約87兆円)に激減した。これは21年の同じ時期の6割程度の規模だ。
「最も貧しい地域」と呼ばれた貴州省は、12年ごろから傘下の投資会社「地方融資平台」などを通じてインフラ開発を加速。経済成長を急いだ。ただ、不動産市場低迷とともに財政は逼迫(ひっぱく)。一部の融資平台の債務返済も行き詰まった。
「遵義の誇り」(30代市民)という急速なインフラ整備は財政を圧迫し、成長の足かせになりつつある。ロイター通信によると、貴州省に加え、雲南省や広西チワン族自治区なども深刻な債務問題を抱えているという。
◇公務員の給与減額も
国家統計局によると、23年の中国全体の不動産開発投資は前年比9.6%減と大きく落ち込んだ。コロナの影響も響き、一部の地方政府は資金不足のため、公務員の給与減額などを余儀なくされている。
米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは昨年12月、中国の格付け見通しを引き下げた。不動産不況や地方政府の財政不安などを理由に挙げた。
国際通貨基金(IMF)は、23年の融資平台と地方政府の債務総額が計約106兆元に上ると試算する。一方、中央政府の債務は約30兆元にとどまり、財務状況は比較的健全だ。専門家の間では、中央から地方への財源移譲を求める声が強まっている。IMFのゲオルギエワ専務理事は今月、米メディアのインタビューで「中国の地方政府債務は高水準で、構造改革が必要だ」と指摘した。 (遵義=中国貴州省=時事)
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