2024-01-03 14:46政治

環境、健康からエンタメまで=大阪・関西万博、多様な展示―求められる開催ビジョン

25年大阪・関西万博の概要
25年大阪・関西万博の概要

 2025年大阪・関西万博の開幕まで1年3カ月余り。それぞれのパビリオンの内容が徐々に明らかになりつつある。各国や国内企業などは、環境保護や健康、デジタルからエンターテインメントまで多様な展示を計画。一方、会場建設費が2350億円に膨張する見通しとなったことなどへの批判は根強く、明確な開催ビジョンの発信を求める声も出ている。
 万博は25年4月13日から半年間、大阪市の人工島「夢洲」で開催する。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。政府は来場者数を約2820万人、経済波及効果を約2兆円と試算する。
 会場内で最も多くのスペースを占めるのは、159の参加国・地域が出展する海外パビリオンで、各国の特徴を反映した華やかな建物が来場者を出迎える。首都ウィーンが「音楽の都」として知られるオーストリアは、楽譜をモチーフに、らせん状のオブジェを設置する計画。カナダは「再生」がテーマで、政府責任者は「川の氷が解け出し春が訪れる様子を外観で表現する」と説明する。
 会場の中央に置かれるのは、生物学者の福岡伸一氏や映画監督の河瀬直美氏ら8人の著名人がそれぞれプロデュースする八つの「テーマ館」。このうち、アニメーション監督の河森正治氏は、森や海の生物多様性を映像や仮想現実(VR)などで体感できる展示を企画し、環境保護を呼び掛ける計画だ。スマートフォンアプリを活用し、来場者らに生物のデータベース化の取り組みに参加してもらう仕組みもつくる。
 民間や自治体による展示内容も豊富だ。健康分野では、パソナグループが人工多能性幹細胞(iPS細胞)など国内の先進的な再生医療技術を紹介するほか、大阪府・市もヘルスケアに関するパビリオンを出展。デジタル技術では、NTTが次世代の通信基盤を使って遠隔で景色や感触などを伝えられる体験型展示を行う。
 幅広い世代が楽しめるよう、エンタメに関する展示も充実。吉本興業ホールディングス(HD)は、所属するお笑い芸人らがステージでパフォーマンスするイベントを会期中、毎日開く。バンダイナムコHDは、人気アニメ「ガンダム」を活用したコンテンツを提供する。
 ◇「なし崩し的誘致」
 万博を巡っては、会場建設費の2度にわたる上振れなどで批判の声が高まり、現時点で機運は低調だ。05年愛知万博に関する著書がある関西大学の岡田朋之教授は「万博の遺産を地域にどう生かすかのビジョンが無く、なし崩し的に誘致や整備が進められてきた」と指摘する。
 岡田氏によると、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで行われた前回万博では、持続可能な開発目標(SDGs)の推進を訴え、閉幕後、施設の一部は23年国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の会場として活用されたという。岡田氏は、大阪が強みとする医療・製薬産業の発展など「万博を契機に大阪が世界的にどのような役割を果たすのか具体的に示していかないと、(国民に)理解されないのでは」としている。 

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