2023-12-25 17:47政治

虐待情報、児相・警察が即時共有=政府、迅速対処へシステム整備―地域で連携ばらつき

児童相談所の虐待相談対応件数
児童相談所の虐待相談対応件数

 児童虐待を早期に把握するため、政府は全国の児童相談所(児相)と警察の即時情報共有を進める方針だ。地域によって情報伝達の度合いにばらつきがある現状を踏まえた措置で、双方をリアルタイムでつなぐシステムを整備する。連携不足により深刻な事案を見逃して対処が遅れる事態を回避する狙いだ。
 具体的には、希望する地方自治体を対象に、警察署への端末設置や児相のシステム改修に要する費用を国が半分補助する。11月下旬に成立した2023年度補正予算に関連経費3.5億円を計上。積極的な活用を促す通知を既に出した。
 こども家庭庁の担当者は「虐待情報入手のタイムラグをなくすことで、見落としを防ぎ、認識の齟齬(そご)もなくせる」と語る。
 18年に東京都目黒区で船戸結愛ちゃん=当時(5)=が虐待死した事件で関係機関の連携不足が問題視されたことが契機。政府は同年、外傷や育児放棄(ネグレクト)が疑われる事例などについて児相・警察間の情報共有を図るよう通達した。
 全国の児相が22年度に対応した虐待相談は約22万件。このうち警察経由が52%を占め、1~2割だった約10年前と比べて連携は進んだ。
 ただ、情報共有の方法や頻度は「自治体によってまちまち」(こども家庭庁)だ。電話やメールでは担当者にすぐに伝達できないケースが生じたり、共有が月に1回程度の自治体があったりするという。
 児童虐待防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」の後藤啓二代表理事は、児相が「虐待ではない」「緊急性が低い」と判断し、警察に連絡しなかった例も多いと指摘。「一機関で虐待リスクを判断するのは危険だ」とし、即時共有とともに虐待が疑われる事案の「全件共有」が重要だと訴える。
 この点に関し、こども家庭庁の担当者は「必要以上の情報を警察が見るようになれば、周囲が相談を控えてしまう恐れがある」と懸念を示す。同庁は全件共有するかどうかは自治体の判断に委ねる方針だ。 

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