日米韓の連携深化に対抗=衛星に続き軍事成果アピール―北朝鮮
【ソウル時事】北朝鮮が全米を射程に入れる核戦力、大陸間弾道ミサイル(ICBM)をまたもや発射した。金正恩朝鮮労働党総書記の「目」となる軍事偵察衛星の打ち上げに続き、攻撃能力である「拳」も誇示。連携を深める日米韓への対抗姿勢を示すと同時に、年末が押し迫る中、今年の軍事的成果をアピールする狙いがあるもようだ。
「万里を見下ろす『目』と万里をたたく強力な『拳』を全て手中に収めた」。正恩氏は11月21日の衛星打ち上げ「成功」後、こう胸を張った。北朝鮮は地球周回軌道に衛星を投入し、在韓・在日米軍基地や米ハワイの海空軍基地、米ホワイトハウスといった重要施設を撮影したと主張している。
北朝鮮の衛星の性能には疑問符が付くが、その開発には日米韓3カ国の軍事活動を早期に把握し、ICBMを含むミサイル攻撃に活用する狙いがある。正恩氏は「軍事的攻撃手段の効用性を高めるためにもより多くの偵察衛星を運用する必要がある」と指摘。偵察衛星とミサイルの開発を「セット」と位置付ける考えを示していた。
一方で、北朝鮮は、自国とは比較にならないほど高度な探知、偵察能力を持つ日米韓が、北朝鮮の弾道ミサイル情報の即時共有を近く開始することに神経をとがらせている。朝鮮労働党機関紙・労働新聞は14日、「(米国主導で)地域情勢をより険悪な対決局面に追い込むための危険千万な軍事的妄動だ」と非難。今回の発射も、こうした日米韓の動きに反発した側面がありそうだ。
韓国政府によると、今回のICBMは北朝鮮が4月と7月に試射した固体燃料式のICBM「火星18」の可能性が高い。固体燃料式は、液体燃料式とは異なり、短時間の準備で「奇襲発射」が可能で、日米韓の防衛態勢をかいくぐる狙いがある。3回の実験で性能を検証し、実戦配備へ近づけているもようだ。
正恩氏は昨年末の党中央委員会総会で「迅速な核反撃能力を使命とする新たなICBM」の開発を指示。今月下旬に開かれる総会で、固体燃料式ICBMを今年の成果として示したい思惑もあるとみられる。韓国の梁茂進・北韓大学院大総長は「年末の総括に向けて国防力強化の実績を積み上げた」と推定した。
北朝鮮は総会で来年の方針を示すが、「11月の米大統領選で北朝鮮問題を外交課題として浮き彫りにするため、強力な対米武力示威を行う」(梁氏)との予想もあり、朝鮮半島の緊張はさらに高まりそうだ。
[時事通信社]
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