2023-11-29 14:30経済

生成AI業界の顔に「激震」=CEO解任劇、統治に懸念―チャットGPT公開1年

オープンAIの統治機構
オープンAIの統治機構

 【シリコンバレー時事】米オープンAIによる対話型AI(人工知能)「チャットGPT」公開から30日で1年。直近には、文章や画像を自動で作る生成AI業界の「顔」となった共同創業者サム・アルトマン氏が最高経営責任者(CEO)を解任され、1週間足らずで復帰する騒動が起きた。統治不全を露呈したことは、誤情報や雇用喪失への懸念に拍車を掛けかねない。
 「一貫して率直さを欠き、取締役会の業務遂行に支障を来した。彼の統率能力をもはや信用できない」。オープンAIは17日、アルトマン氏の退社を発表した。会長職を退任させられた共同創業者グレッグ・ブロックマン氏も反発し、退社を表明した。一部幹部らも後に続いたという。
 同社は発表時、アルトマン氏を強く非難したが、詳しい原因に言及しなかった。21日には一転、アルトマン氏のCEO復帰で基本合意に達した。
 背景には、従業員約770人のうち9割超がアルトマン氏の復帰を求めたことがある。要求に応じなければ、アルトマン氏らを迎え入れる意向を表明したマイクロソフト(MS)に移籍すると迫った。投資家らも取締役会にアルトマン氏を戻すよう求めた。
 アルトマン氏らの帰還とともに、新たな取締役会が発表された。解任に動いた4人のうち、留任は1人。新たに2人が選任され、米メディアによるとさらに増員される見通し。一方で、今も経緯は不明だ。生成AIの安全性を重視する取締役と事業展開を加速したいアルトマン氏の衝突と見る向きもある。
 オープンAIは2015年、「人類の利益のためのAI開発」を掲げ、非営利団体(NPO)として発足。19年に開発資金を工面するため営利子会社を設立した。アルトマン氏は今年5月の上院小委員会で「営利事業はNPOに完全に管理されている」と説明した。
 ただ、今回、取締役会が自らの決定を短期間で翻した。その過程も不透明だ。ベンチャーキャピタルの影響も指摘されている。MSのナデラCEOは合意を受けた声明で「効果的な統治の最初の重要なステップだ」と改革の必要性に言及した。
 アルトマン氏は4月に来日し、岸田文雄首相と意見を交わした。日本政府は、利用推進と安全性の両立を目指し、ルール整備を進めている。そうした中での騒動は、AIの制御だけでなく、それを扱う企業の統治の不安定さにも目を向けさせる結果となった。 

 

 ◇オープンAIの1年
【2022年】
 11月30日 「チャットGPT」一般公開
【2023年】
  1月    マイクロソフト(MS)、追加投資発表。投資総額最大 100億ドル
  2月    MS、検索エンジン「ビング」と基本ソフト(OS)ウィンドウズへの
        基盤技術搭載発表
  3月    基盤技術「GPT―4」開発と発表
        MS、ビジネスソフト群にも基盤技術活用と発表
  5月    アルトマン氏、米上院小委員会で証言
        チャットGPT、iPhone(アイフォーン)アプリで利用可能に。
        日本含む30カ国超に提供
  7月    チャットGPT、アンドロイドOSへの対応発表
  8月    企業向けチャットGPT公開
 11月 6日 開発者会議を初開催
    17日 アルトマン氏のCEO解任、退社発表
    19日 MS、アルトマン氏ら迎え入れる意向表明
    21日 アルトマン氏、CEO復帰で基本合意

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