避難先ガザの子育て支える母子手帳=医療施設閉鎖後も頼りに―日本が普及に尽力
【エルサレム時事】イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘で大きな被害を受けたパレスチナ自治区ガザで、妊婦や乳幼児を抱える母親の多くが、日本が普及に尽力した母子手帳を手に避難生活を送っている。医療施設が閉鎖され、妊娠や出産、育児に関する電子情報を得られない中でも手帳を頼りに子育てを続けることができるとして、日本に感謝する声が上がっている。
ガザなど自治区では2008年以降、国際協力機構(JICA)が作製に協力したアラビア語版の母子手帳の運用が始まった。識字率の低さを考慮し、イラストを多く使ったのが特徴だ。
JICAは印刷費の一部を支援し、地元の公立医療機関のほか、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)やNGOの施設でも配布。JICAパレスチナ事務所の推計によると、今ではパレスチナ人の母親のほとんどが利用している。
23年10月の戦闘開始後、ガザ北部ガザ市近郊に避難し昨年10月に息子を出産したヘバ・ジブリールさん(30)は、電話取材に「砲撃が激化して診療所に通えなくなり、手帳の情報を頼りにしている。妊娠中、陣痛に見舞われた時も、病院に行くべきかどうか判断するのに役立った」と語った。
ガザ市内で避難生活を送るノラ・ハリールさん(38)は、戦闘開始後に娘2人を産んだ。「診療所が閉鎖され、妊娠の経過観察ができなくなったが、手帳には何をすべきか順序立てて書いてあり安心できた。手帳を提供してくれて感謝している」と力を込めた。
JICAパレスチナ事務所の星光孝所長は「母子手帳を持って避難している人は大変多い」と指摘。「紛争で(電子)システムが利用できなくても、紙媒体は持って逃げられる」と手帳の重要さを強調した。
[時事通信社]
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