社会保障、ぶれる石破首相=高額療養・年金改革、野党が攻勢―予算委
国民生活に直結する社会保障分野で石破茂首相の判断がぶれる場面が目立ってきた。夏の参院選を控え、制度見直しに伴う「痛み」を極力避けたい思惑からだが、迷走気味の対応に野党は攻勢を強める。政府や与党内からも手腕を疑問視する声が改めて上がっている。
「混乱としか言いようがない。反省はないのか」。立憲民主党の野田佳彦代表は13日の衆院予算委員会で、高額療養費制度見直しを巡り「二転三転」した政府対応を強い口調で非難した。
政府の当初の方針は、2025年度予算案に関する衆院の審議段階で2度修正された末、参院審議で凍結に追い込まれた。首相は13日の答弁で、高齢化や高額薬の普及に伴う現役世代の保険料上昇を抑えるには自己負担引き上げはやむを得ないとの認識を示しつつ、判断の遅れを認めて「申し訳なかった」と陳謝した。
異例の経過は、連立を組む公明党から「待った」が掛かった事情も大きい。夏の東京都議選や参院選への影響を恐れており、斉藤鉄夫代表が5日に首相と会い、「選挙を前に現場では説明が難しくなっている」と伝えた。
もっとも、今秋までにまとめるとした新たな方針は白紙状態だ。野田氏から今後の検討プロセスを問われた首相は「厚生労働省任せにせず、私自身も議論に参画する」と表明したが、政府関係者は「どういう枠組みを考えているのか。場当たりの答弁ではないか」と困惑を隠さない。
予算案に賛成した日本維新の会も質疑で「丁寧なプロセスを約束してもらいたい」(池下卓氏)と迫った。
政府は年金制度改革関連法案の今国会提出を目指してきた。しかし、国民負担につながり得る内容に対し、参院選での争点化を避けたい参院自民などが難色を示しており、政府はこの日、法案提出期限の14日に間に合わないと国会に伝達した。
首相は13日、森山裕幹事長に党内手続きを急ぐよう指示。ただ、予算委で野田氏から提出の確約を迫られると「党として方針を決する」と明言を避けた。党幹部はなお「議論してみないと分からない」と明かしており、あいまいな首相の態度が方向性をぐらつかせている面は否めない。
参院選の候補選定でも首相の腰の引けた対応が目を引く。自民は差別的発言が過去に問題となった杉田水脈元衆院議員を比例代表に立てる方針を8日に決めた。同氏を推す保守派に配慮したとみられ、首相は「最終的に有権者に判断いただく」と説明する。だが、中道票を失う可能性も指摘されており、政権幹部は「信じられない判断だ」と率直な批判を口にした。
[時事通信社]
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