自民、石破首相へ不満表面化=参院改選議員が退陣要求
自民党内で、夏の参院選への危機感から石破茂首相(党総裁)に対する不満が表面化し始めた。改選を迎える西田昌司参院議員が12日、公然と退陣を要求。「高額療養費制度」を巡る判断が二転三転したことなどで、首相の求心力は低下している。今後、与党内で首相交代論がどこまで広がるかが焦点だ。
党参院議員総会で、西田氏は「今の体制では参院選を全く戦えない。リーダーを選び直さないといけない」と述べ、2025年度予算案の成立後に党総裁選を実施すべきだと主張。記者団には、現状のまま参院選に臨めば「大惨敗する」との見方を示し、「腹の中で(首相退陣を)思っている人はたくさんいる」と訴えた。
背景には、首相の政権運営への不信感がある。高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げは、患者団体などの批判を受けて修正を重ね、予算案の衆院通過後の7日に先送りを表明。今国会の重要法案の一つと位置付ける年金制度改革関連法案は、提出の可否も決められずにいる。
追い打ちとなったのが9日の党大会だ。首相は演説で団結を訴えたが、参院選に向けた新たな発信は乏しかった。小林鷹之元経済安全保障担当相は「メッセージが感じられなかった」と批判。高市早苗元政調会長は「暗めの雰囲気」で盛り上がりに欠けたと酷評した。
西田氏の退陣要求について、旧安倍派中堅は「みんなが思っていることを言った」と同調。同派や小林、高市両氏ら保守系議員の間には、首相が予算案の修正と同様、選択的夫婦別姓制度の導入でも野党の要求を受け入れかねないと、警戒する向きがある。
これに対し、党幹部は「退陣を要求する暇があったら地元を回るべきだ」と不快感を隠さない。党内は現時点で「首相がころころ変わるのは良くない」(旧二階派中堅)との声が多い。自民の苦境はそもそも、西田氏も関係した旧安倍派の裏金事件が発端のため、麻生派中堅は「旧安倍派が(退陣を)言うのはどうなのか」と疑問を呈した。
公明党も交代論とは一線を画す。斉藤鉄夫代表は12日、首相と首相官邸で面会し、「一致結束して難局を乗り越えるべきだ。石破政権を支えたい」と激励。首相は「心から感謝する」と応じた。
[時事通信社]
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