対米投資への悪影響懸念=USスチール買収阻止に批判も―米
【ワシントン時事】バイデン米大統領による日本製鉄のUSスチール買収計画に対する中止命令が、対米投資に悪影響を与えるとの懸念が出ている。安全保障上の懸念を買収阻止の理由に挙げたが、自身の支持基盤である労働組合が反対していることに配慮したとの見方が強く、批判の声も多い。政治的事情を優先する姿勢は、日米関係にも影を落としそうだ。
バイデン政権は、トランプ第1次政権で悪化した同盟国との関係再構築を目指し、サプライチェーン(供給網)など経済安全保障の分野で日本との関係強化を図ってきた。日本の対米直接投資残高は増加を続け、2023年末時点では7800億ドル(約123兆円)超と、世界最大の規模だ。
米議会調査局によると、買収計画の安保審査を行った米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)では、1980年代に日本企業による米企業買収を問題視する案件があったものの、近年は中国など「敵対国」による米企業のM&A(合併・買収)や土地取得などを警戒。最近の中止命令は、ほとんどが中国企業による投資だった。
それだけに、同盟国に矛先が向かった今回の中止命令には「理解し難く、残念だ」(武藤容治経済産業相)と日本からは反発の声が上がる。米国内でも疑問視する向きが多く、米国商工会議所のマーフィー副会頭は「買収計画を政治問題化した」と批判。「対米投資を冷え込ませる可能性がある」と指摘する。
CFIUSに詳しい米弁護士は「海外企業は、米国の大企業やインフラ関連企業の買収を控えることになるだろう」と話している。
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