日鉄、異例提訴で時間確保=命令無効化、米次期政権に働き掛け
日本製鉄は、米鉄鋼大手USスチール買収計画の中止命令を受けてバイデン米大統領らを提訴する異例の対応に踏み切り、大統領命令と米政府機関の審査の無効化を目指すことになった。「どれぐらいの時間がかかるかは言えない」(日鉄の橋本英二会長兼最高経営責任者)という今回の提訴には、買収中止を覆すために一定の時間を確保し、トランプ次期政権へ働き掛けを進める狙いもある。
命令は原則30日以内に計画を放棄するよう求めている。しかし、日鉄は訴訟で「今回の禁止命令全体が無効」(橋本氏)と主張し、2月2日までの計画放棄を求めた命令の効力は訴訟が継続している間は停止するとしている。
それでも日鉄の主張が認められ、命令が無効となる可能性は非常に低そうだ。「最初から結論ありきの政治的介入だった」(橋本氏)という日鉄の主張が仮に認められれば、トランプ政権でメンバーが刷新される対米外国投資委員会(CFIUS)で改めて計画が審査されることになるが、トランプ次期大統領も以前から買収計画への反対を表明しており、新たなハードルとなりそうだ。同氏は6日、SNSに「(USスチールを)なぜ売却したいのか」と疑問を呈する投稿をしている。
日本の産業界には、トランプ氏について「ビジネスマンだし、(事態が)好転する可能性はある」(出光興産の木藤俊一社長)と今後に期待する声もある。日鉄は訴訟で命令の無効を求める一方、トランプ氏に対しては「買収が米国の経済と国家安全保障を強化する」と訴え、米国側にもメリットがあると理解を求めていく必要がある。
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