日米関係への影響懸念=USスチール問題、政府困惑
政府は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画を巡り、今後の日米関係に影響が及びかねないと懸念している。米メディアはバイデン米政権が買収を阻止する方針だと報じ、米側が安全保障上のリスクを盾に政治的圧力をかけているためだ。今後の日本企業の米国進出にも波及しかねず、政府内では困惑が広がっている。
林芳正官房長官は11日の記者会見で、USスチールの買収について「個別企業の経営に関する事案のためコメントは控える」と述べた。その上で「日米の投資拡大を含めた経済関係の強化、経済安保分野における協力は互いにとり不可欠だ」と強調した。
買収計画は現在、安保への影響を評価する米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)が審査を行っている。米メディアによると、年内に見込まれる審査結果を踏まえ、バイデン政権は買収を阻止する方針。トランプ次期米大統領も今月、「完全に反対する」と自身のSNSに投稿した。いずれも買収に反対する全米鉄鋼労組(USW)への配慮があるとみられ、計画の行方は極めて厳しい状況だ。
日本政府は米政権に水面下で働き掛けを続けており、先月には石破茂首相がバイデン大統領に承認を求める書簡を送ったとされる。だが、安保上のリスクが持ち出されたことに、政府内からは「同盟国の日本の企業に買収されると安保上問題が生じるというのはいかがなものか」(外務省幹部)と不満の声がくすぶる。
政府は引き続き、雇用維持や新たな設備投資につながるなど米側のメリットを訴える方針。ただ、米側で審査結果に影響を与える発言が相次ぐ状況に、政府関係者は「自由な経済活動は風前のともしびのようだ」と嘆いた。
[時事通信社]
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