綱渡りの年末国会=補正・政治改革、情勢混沌
会期の折り返しを迎えた臨時国会で、石破茂首相は2024年度補正予算案の成立や政治資金規正法再改正に全力を挙げる。しかし、経済対策や「政治とカネ」を巡り、与野党間の溝はなお深い。21日の会期末が迫っており、師走の国会運営は綱渡りの様相だ。
「10月15日の衆院選公示日に首相は『昨年を上回る大きな補正予算を成立させたい』と述べた。必要な施策の積み上げができていたのか」。9日の衆院本会議で、立憲民主党の酒井菜摘氏は補正予算案の妥当性に疑問を投げ掛けた。
総合経済対策の裏付けとなる補正予算案は、一般会計の歳出総額が13兆9000億円余りで、物価高対策や能登半島地震の復旧・復興事業などが盛り込まれた。昨年度補正を上回り、野党からは「財政上の異常事態。規模ありきではないか」(日本維新の会の三木圭恵氏)との批判の声が上がる。
首相は「デフレに後戻りせず速やかに実行すべき施策を積み上げた結果」などと強調。国民民主党の協力を得て、12日にも衆院を通過させる日程を描く。
ただ、税制改正では与党と国民民主の主張が対立。国民民主は来年から所得税非課税枠拡大のため「年収103万円の壁」を見直すよう要求するのに対し、与党は「事務的に困難」として難色を示す。国民民主は補正に協力しないこともにおわせて与党を揺さぶり、立民は補正予算の修正案提出に向けた野党協議を視野に入れる。
政治とカネでは、衆院政治改革特別委員会が10日に開かれる。政治資金規正法の再改正に向け、自民党は企業・団体献金を存続させ、政策活動費は廃止するものの外交などへの一部支出を非公開とする立場。野党各党は「抜け穴だ」などと対決姿勢を強めている。
9日には公明党が国民民主と改正案を共同提出すると表明。公明内では衆院選大敗を受け、「自民に厳しい姿勢で臨まなければ党の存亡に関わる」(党幹部)との危機感が高まっている。政治とカネの問題では自民と一線を画した格好だ。国民民主幹部も「一部の政党で通すのはだめだ」と述べ、与野党の幅広い合意を求める。
「自公国」の枠組みさえ揺らぐ情勢となる中、首相が掲げる「年内決着」の行方はますます混沌(こんとん)としている。
[時事通信社]
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