「翼音お帰りと声掛けたい」=発見の遺体、父譲りの上着―輪島中3女子不明・能登大雨
石川県・能登半島の大雨で安否不明になった輪島市の中学3年喜三翼音さん(14)とみられる遺体が見つかったことを受け、父鷹也さん(42)らが1日、取材に応じた。鷹也さんは「一日一日、見つかってほしいという思いだった。顔を見たら、お帰りと声を掛けたい」と言葉を詰まらせた。
鷹也さんによると、翼音さんは市立輪島中の美術部部長を務める「絵が好きで、明るく優しい子」だった。記録的大雨となった9月21日、同市久手川町の自宅では、鷹也さんらが皆外出したため一人で残っていた。
近くを流れる塚田川は朝は問題なかったが、その後、水位が急激に上昇して氾濫。自宅が危険な状態と聞いた鷹也さんは午前9時43分、外出先から翼音さんとLINEでビデオ通話した。画面越しには、家の周りを覆う茶色の水面が既に見えたという。
翼音さんは2階の部屋にいたが、ドアは開かず、「窓から飛び降りる」と伝えた。鷹也さんは「(濁流に)のみ込まれるから」と待機を指示。午前10時すぎには電話は通じなくなった。
最後の通話では、家が流された場合に備え、翼音さんに長袖と長ズボンを着用するよう伝えた。鷹也さんは1日午後に県警輪島署を訪れて遺体の衣服の写真を確認したが、写っている長袖の服は翼音さんから「着ないならちょうだい」と言われ、鷹也さんが譲ったものだった。「あまり言うことを聞かない娘だったが、最後に言うことを聞いてくれた」。
[時事通信社]
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