ハリス陣営の大きな鍵となるか、黒人女子学生社交クラブ
【ワシントンAFP=時事】米大統領選で共和党候補・ドナルド・トランプ前大統領と対決する民主党候補・カマラ・ハリス副大統領にとって、最大の効果をもたらすのは約40年前、大学時代に所属していた黒人女子学生の社交クラブかもしれない。≪写真は米大統領選の民主党候補カマラ・ハリス氏が通った米ワシントンD.C.にあるハワード大学のキャンパス≫
米国の大学には、通常は同性の学生同士による会員制のグループが数多くあり、それぞれフラタニティ(男子学生社交クラブ)、ソロリティ(女子学生社交クラブ)と呼ばれる。各社交クラブの名称は、ギリシャ文字の組み合わせで表される。
ハリス氏は伝統的に黒人女子学生が集ってきた社交クラブ「アルファ・カッパ・アルファ(AKA)」に所属していた。これは全米の36万人の女性と直接つながるネットワークを持つことを意味する。
先ごろ行われた民主党全国大会に出席した同クラブの会員タニア・バハムさんは、「彼女がこのネットワークに何か求めることがあれば、何であれ、私たちはその推進と実現のために協力するつもりです」と語った。
女性と黒人を主要な支持層としている民主党も、この動きに注目している。
社交クラブ自体に党派性はないが、バハムさんのように資金調達や有権者登録に個人的にネットワークを活用しようとする会員は多い。
ルイジアナ州でソーシャルワーカーとして働くバハムさんは「若者や高齢者が確実に登録し、投票所に行けるようにしたい」と語った。
■既存ネットワークの機動力
ハリス氏はアフリカ系米国人のための高等教育として設立された「歴史的黒人大学(HBCU)」の一つ、首都ワシントンD.C.にあるハワード大学でAKAに加入した。このソロリティは1908年に設立された、米国初の黒人女子学生のための組織だ。
その後、続々と登場した黒人学生の社交クラブは、人種差別からの避難場所を提供し、また公民権運動の組織拠点としても機能した。
AKAには現役学生と卒業生の両方の支部があり、単なる学生組織以上の存在となっている。
AKAの会員は、150万ドル(約2億2000万円)の資金を調達した黒人女性リーダーの連合体「ウィン・ウィズ・ブラックウーメン」のズーム会議に参加した。またAKA元会長のグレンダ・グローバー氏は全米の歴史的黒人大学で、ハリス氏への支持を広げる活動を主導している。
さらにAKAでは創設以来初めて、政治候補者のために活動資金を集める政治行動委員会を結成した。
「私たちは皆、働く準備ができている」と、Zoom会議に参加したイリノイ州の郡職員であるドナ・ミラー氏はシカゴ・サンタイムズに語った。「若者から高齢者まで、世代を超え、民族を超えて、多くの人々が活気づいた」
■「隠れた装置」
ハリス氏にとって、AKAや他の黒人学生社交クラブのネットワークは確かに有益だ。だが、11月の大統領選に実際に及ぼす影響を測るのは難しい。社交クラブやその会員は概して口が堅く、AFPが申し込んだ取材を拒否する人々もいた。
ペンシルベニア大学の政治学者ダニエル・ホプキンス氏は「社交クラブを通じた動員は害にはならない」が、「4年制大学に通い、そうした組織の会員となっている有権者は米国全体で限られている」と指摘した。
また同氏の研究によると、アフリカ系米国人は圧倒的に民主党の支持者が多いが、近年では若年層や選挙に関心のない層を中心に民主党への支持が減少している。
一方、セントラルフロリダ大学で黒人有権者の動向を研究するアマンダ・ウィルカーソン助教によると、黒人学生社交クラブのような組織は、世論調査やメディアでは無視されがちだが、「隠れた装置」として過去の選挙でも全米および地方規模で組織化を図ってきた。
今年の大統領選は初めての経験ではなく、会員たちは選挙運動に精通しているという。ハリス氏は「このような支援ネットワークを活用できる初めての大統領候補だ」とウィルカーソン氏は言った。「ただし、それはまったく新しいことではない」【翻訳編集AFPBBNews】
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