毛皮農場の動物からウイルス100種類超検出 中国研究
【パリAFP=時事】中国の毛皮農場で飼育されている動物から100種類以上のウイルスが検出されたとする研究結果が4日、科学誌「ネイチャー」に発表された。新たに検出されたウイルスも含まれ、ヒトに感染する可能性が懸念されている。≪写真は中国・河北省張家口市の毛皮農場のタヌキ≫
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)以降、ミンクなど毛皮用哺乳類の飼育は、新たなウイルスの種の壁を越えたヒトへの感染や新たな流行を引き起こすリスクを高めると科学者たちは警告している。
新型コロナ研究を主導してきた豪シドニー大学のエドワード・ホームズ教授(ウイルス学)はAFPに対し、世界の毛皮産業は「新たなパンデミックの発端となる可能性が最も高い経路の一つ」だと感じていると述べ、「個人的には、毛皮農場は世界的に閉鎖されるべきだと思う」と語った。
2019年末に新型コロナの第一例が確認された中国では現在、毛皮農場におけるウイルスの潜在的なリスク調査研究が進められており、ホームズ氏は新たな論文の共著者に名を連ねている。
中国主導のこの研究チームは2021~24年、中国全土で病気によって死んだミンク、ウサギ、キツネ、タヌキなどの動物461匹から肺や腸の組織サンプルを採取し、その遺伝物質を解析した。
大半は毛皮用、または食用、伝統薬用として飼育されていた動物で、野生動物は約50匹だけだった。
研究チームはこれらの動物から、125種類のウイルスを検出。そのうち36種類は新しいウイルスだった。
また、39種類のウイルスは、ヒトを含めた種の壁を越えて感染する「リスクが高い」と評価された。この中にはすでにヒトの間で広がっているE型肝炎ウイルスや日本脳炎ウイルスも含まれているが、13種類は新しいウイルスだという。
また、モルモット、ミンク、ジャコウネズミからは、数種類の鳥インフルエンザウイルスが検出された。
さらに7種類のコロナウイルスも検出されたが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に近いものはなかった。
■「警鐘」
ホームズ氏は、コウモリ由来コロナウイルス「HKU5」に似た「HKU5様ウイルス」を最も懸念しているという。過去にアブラコウモリから検出されているこのウイルスは今回、飼育下のミンク2匹の肺から発見された。
このウイルスは中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすMERSコロナウイルス(MERS-CoV)の近縁種。
「コウモリから飼育下のミンクに種を越えて感染したのが確認された点は、警鐘として受け止めるべきだ」とホームズ氏は述べ、「このウイルスは監視が必要だ」と忠告した。
野生の哺乳類の間では、数千種の未知のウイルスがまん延していると考えられている。科学者たちは、こうしたウイルスが毛皮農場で飼育されている動物に感染し、そこからさらにヒトへ感染する可能性を懸念している。
新型コロナウイルスの起源に関しては、コウモリ由来のウイルスが野生動物の取引を通じてヒトに伝播(でんぱ)したとする説が有力視されている。
「私は野生動物の取引が、SARS-CoV-2を出現させたと強く信じている」とホームズ氏は述べた。「それと関連する毛皮農場の取引もまた、新たなパンデミックウイルスを容易にもたらす可能性があると思う」
論文では、毛皮農場の飼育動物の中でも特に、「高リスク」ウイルスが最も多く検出されているミンク、タヌキ、モルモットについて監視を強化するよう求めている。【翻訳編集AFPBBNews】
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