東京五輪の借り返せず=岡沢、またもや早期敗退―ボクシング〔五輪〕
勝者の名前が告げられる瞬間、岡沢セオン(INSPA)の左腕が掲げられることはなかった。怒りも悲しみもなく、表情は驚きのみ。ボクシング男子71キロ級で金メダル候補と言われながら初戦の2回戦で敗退し、「まさかこんなところで…」と絶句した。
試合の入りで失態を演じた。左ジャブから右の返しをもらい、リズムもジャッジの印象も悪くなった。足を使って取り戻そうとするが、判定は2―3。「修正はできた。でも、外から見たら足りない部分があるのかな」と目を閉じた。
同じ2回戦敗退の屈辱を味わった3年前の東京五輪。女子の入江聖奈が表彰台の中央で喜ぶのを見て、「自分も立ちたかった。とにかくしんどかった」。嫉妬に似た悔しさを覚え、「借りは五輪でしか返せない」。そう誓ったはずだった。
東京大会後に日本選手で初めて世界選手権を制しても「特に話題にもならない。やはり五輪の金メダルとは違う」と痛感した。根底にあるのは、もっと競技を発展させたい思い。強豪ウズベキスタンなどへ修行に出掛け、時にはハンマーでタイヤをたたくトレーニングなどで根幹から見直してきた。
時には広告塔となり、普及活動にも励んだ28歳。「結果で恩返しできなかった。自分がアマチュアボクシングにできることを考えたい」。まずゆっくり休む。愛する競技にどう携わるかは、それから考える。 (時事)
[時事通信社]
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