2024-06-30 14:03政治

安保環境変化で役割拡大=自衛隊発足70年―専守防衛形骸化に懸念も

 陸海空3自衛隊が発足して1日で70年。日本を取り巻く安全保障環境は、中国の軍事的台頭などで厳しさを増し、自衛隊の役割は拡大の一途をたどってきた。集団的自衛権の行使が容認され、他国を攻撃する「反撃能力」保有も決定。自衛隊と米軍の一体化が進む一方で、専守防衛の形骸化を指摘する声もある。
 自衛隊は朝鮮戦争を背景に1954年に発足した。国内治安維持のため設立された警察予備隊などを前身とし、当初装備品は米国の貸与や供与に頼ってきた。
 転機は76年に初めて策定された「防衛計画の大綱」。米ソのデタント(緊張緩和)を踏まえ、限定的・小規模な侵略への独力での対処を定めた「基盤的防衛力構想」で、平時から一定程度の防衛力整備を行う方針が定まった。
 冷戦が終結した90年代に入ると「国際貢献」の名の下に海外派遣が本格化した。湾岸戦争終結後、91年にはペルシャ湾に掃海艇を送り、92年に国連平和維持活動(PKO)協力法が施行。2001年にはテロ対策特別措置法が成立し、インド洋で給油活動を行った。
 もう一つの転機は安倍晋三首相(当時)の下、14年7月1日に閣議決定された集団的自衛権行使の一部容認だ。それまで歴代内閣は否定してきたが、「密接な関係」の他国が攻撃され日本の存立が脅かされた場合、日本への直接攻撃がなくても自衛権発動を可能とした。
 15年には安保関連法が成立し、米軍などへの武器等防護やPKOの駆け付け警護など新たな任務が付与された。多国間訓練も活発化し、木原稔防衛相は6月25日の記者会見で「国際社会の平和と安定のため、より積極的に貢献できるようになった」と強調した。
 岸田文雄首相は22年に国家安保戦略を改定し、反撃能力の保有を決定。防衛費を23~27年度の5年間で約43兆円に大幅増額し、長射程ミサイル取得など防衛力の抜本強化を打ち出した。
 台湾海峡有事をにらみ、南西地域の防衛力整備も推進。与那国、石垣、宮古各島に陸自駐屯地を開設し、陸自第15旅団(那覇市)を師団化する。3自衛隊の一体運用を担う「統合作戦司令部」を来春創設し、米軍との指揮統制面の連携強化を図る。
 「いまは現実に脅威が存在する」。防衛省幹部は日本の安保環境に危機感を示す。中国は過去30年間で国防予算を37倍に拡充。習近平政権は「世界一流の軍隊」建設を掲げ、海空戦力の増強や軍の現代化を推進。東・南シナ海進出を強め、台湾周辺の活動も常態化している。
 北朝鮮は核・ミサイル開発を続け、ロシアは日本周辺で中国軍と共同活動を拡大し、北朝鮮との関係も強化している。吉田圭秀統合幕僚長は「戦争を起こさせない努力をいかに続けていくかが大切な使命だ」と防衛力整備の必要性を訴える。
 自衛隊は災害派遣などで大きな役割を担うが、防衛力の強化は国論を二分してきた。政府は「専守防衛に徹し、他国に脅威を与える軍事大国とはならない」と強調するが、自衛隊と米軍の一体化が進む現状への懸念は根強い。国民に対する丁寧な説明がますます重要となっている。 
[時事通信社]

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