「広島」継承、対中国を重視=サミット成果強調、浮揚は見えず―岸田首相
岸田文雄首相は16日、イタリア、スイス歴訪を終えて帰国した。3年連続の出席となった先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、昨年の広島サミットの議論の継承・発展や、東・南シナ海で威圧行動を強める中国に関する討議の主導に努めた。成果をアピールし、今後も首脳外交に注力する考え。だが、自民党派閥の裏金事件の影響で内閣支持率は低迷を続けており、政権浮揚につながるかは見通せない。
「広島サミットでの成果をしっかりと引き継ぎ、国際社会が直面する課題に結束して対応することを確認できたという意味で有意義だった」。首相は15日、G7サミットが行われたイタリア南部プーリア州を出発する前、同行記者団にこう誇った。
首相はアジアで唯一のG7首脳としてサミットに参加。中国問題への対応に力点を置いた。14日の「インド太平洋・経済安全保障」に関する討議では最初に発言。「インド太平洋と欧州の安全保障は不可分一体だ」と口火を切り、警戒を呼び掛けた。
中国の過剰生産問題や経済的威圧に対する日本の立場も説明。首脳声明には中国への「懸念」を示す文言が多く並んだ。首相が広島サミットで重視した「核兵器のない世界」への取り組みも声明に明記された。
首相は今後も重要な外交日程を抱える。7月9日から米国で開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席する予定。ロシアの侵攻が続くウクライナに500億ドル(約7兆8500億円)の支援をG7が打ち出したことを踏まえて議論する。同月中旬には東京で、太平洋島しょ国・地域の首脳を招いた「太平洋・島サミット」を主宰し、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」に関する連携確認を目指す。
ただ、政権の足元は不安定な状況が続く。23日が会期末の今国会では政治資金規正法改正案の成立に全力を挙げるが、立憲民主党は内閣不信任決議案を提出する方針で対決姿勢を強めている。政府関係者は「G7各首脳と同様、岸田首相も国内問題で頭がいっぱいだろう」と述べた。
政権の求心力は落ち、首相は今国会での衆院解散を見送る方向。9月の任期満了に伴う自民党総裁選の再選に暗雲が漂う。党内では「国際情勢は混沌(こんとん)とし、首相を代えるのは良くない」と続投を支持する意見がある一方、低支持率の首相の下で「衆院選は戦えない」との交代論も拡大。党地方組織からも退陣を求める声が公然と上がり、閣僚経験者は「首相再選なら自民党は見放される」と危機感を示した。
[時事通信社]
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