１０兆円予備費、前例なき巨額　安倍首相、会期延長回避に布石

　政府は２７日に閣議決定した２０２０年度第２次補正予算案に、１０兆円という前例のない巨額予備費を計上した。長期化必至の新型コロナウイルス対策に臨機応変に対処するためと説明するが、野党に押され気味の今国会を延長せず、会期末の６月１７日に閉じたいという狙いが透ける。予備費は政府の裁量で支出できるため、野党からは事実上の白紙委任になるとの批判の声も上がった。
　２次補正は、一般会計総額約３２兆円の３分の１近くを予備費に充てた。安倍晋三首相は２７日の政府・与党政策懇談会で「今後の長期戦を見据え、状況変化に応じた臨機応変な対応ができるように１０兆円の予備費を追加する」と表明。１次補正の１．５兆円から大幅に上積みした。
　自民党は２０日の提言で「強大な予備費」を求めていた。１０兆円という規模に、首相に近い党幹部は「本当に驚きだ。５兆円かなと思っていた」と明かし、公明党の石田祝稔政調会長も記者会見で「１０兆円までいくとは思っていなかった」と驚嘆した。当初予算の予備費５０００億円と比較しても、異例の規模であることが分かる。
　第２波、第３波の感染拡大が懸念される中、自民党幹部は今回の予備費で「冬まで持つ」と指摘。別の党幹部も「国会閉会中に緊急の案件があったとき、また一から予算編成をすると時間がかかる。予備費での対応が最善策だ」と評価した。
　党内には、国会会期延長を前提に３次補正を求める声もあったが、東京高検検事長の定年延長や辞職問題などで内閣支持率は急落。勢いづく野党の攻勢を封じるためにも、国会を早く閉じたいのが政権中枢の本音だ。党参院幹部は、１０兆円予備費で、秋の召集が恒例の臨時国会を「開く必要もなくなる」とまで言い切った。
　これに対し、立憲民主党の安住淳国対委員長は「１０兆円を政府が好き勝手に使える」と記者団に語り、問題視。国民民主党の玉木雄一郎代表も会見で、予算の具体的使途を国会がチェックできなくなるとして「財政民主主義の観点からどうなのか」と批判した。野党は衆参両院の予算委員会で政府の姿勢を厳しくただす方針だが、補正自体には野党の要望も反映されていることから「賛成せざるを得ない」（国民中堅）との声が漏れる。（2020/05/28-07:20）

The Japanese government has set aside 10 trillion yen in reserve funds under its second supplementary budget for fiscal 2020, which started last month, marking an unprecedented amount of budget reserves.
   The government hopes to use the funds to respond to the coronavirus epidemic in a flexible way, officials said.
   Meanwhile, it apparently aims to close the ongoing regular session of the Diet, the country's parliament, on June 17 as scheduled, without an extension, in order to fend off growing pressure from opposition parties over a spate of problems. The government can use the reserve funds at its discretion when needs arise.
   The reserves account for about one-third of the 32-trillion-yen general account under the second extra budget, which was adopted at a cabinet meeting on Wednesday.
   "We'll add 10 trillion yen in reserve funds so that we can respond flexibly to changes in the situation, in view of the long battle (against the virus)," Prime Minister Shinzo Abe said at a meeting of government and ruling bloc officials on Wednesday.