東電、遠い利益目標 競争力低下、提携戦略描けず―東日本大震災から13年
東京電力福島第1原発事故を引き起こした東日本大震災から11日で13年となる。東京電力ホールディングスはこの間、「福島への責任貫徹」を掲げ、他電力との火力発電事業の統合といった経営改革を進めてきた。しかし、小売り全面自由化で競争力が低下したほか、新たな事業提携戦略を描けず、利益目標の実現には程遠い状況が続く。
2012年7月、政府は東電に1兆円を出資し、議決権の50.1%を掌握した。賠償支払いや電力の安定供給のため、破綻処理ではなく実質国有化を決定。賠償費用は「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が政府から交付された国債を原資に肩代わりした上で、主に東電が返済する枠組みを構築した。
震災後の東電の事業は「福島事業」と「経済事業」に大別される。原発事故に伴う賠償・復興、廃炉を進める福島事業では、処理水の海洋放出を昨年8月に開始。賠償金などの支払総額は11兆円を超えた。被災地復興は道半ばであるものの、経済産業省幹部は「もし東電を破綻処理していたら(状況は)もっとひどかっただろう」と賠償・廃炉スキームが一定程度機能したと強調する。
一方、福島事業の原資となる経済事業では稼ぐ力は向上せず、原発再稼働に望みをつなぐ状況が続く。柏崎刈羽原発(新潟県)が再稼働した場合、年1100億円の収支改善効果を見込むが、再稼働に不可欠な地元同意を得るのは容易ではない。
東電は、賠償と廃炉を合わせて年5000億円程度の費用を確保する目標を掲げるが、17~22年度に捻出した額の年平均は約4000億円だった。除染費用は、政府保有の東電株の売却益を充てる。具体的には、中長期的に年4500億円規模の純利益を計上する企業となることで、東電の株価を1500円に高め、4兆円の売却益実現を目指す。だが、純利益の水準は程遠く、株価も目標の半額にとどまる。
東電HDの山口裕之副社長は「経営の安定性、収益力の向上はまだまだ課題がある」と認める。
政府は事故後、小売りを全面自由化し、事業者間の競争を促すことなどを柱とする「電力システム改革」を実行した。東電は関東エリア以外でも積極的に競争を仕掛けたものの、逆に攻勢に出た新電力が首都圏に参入。東電の管内でのシェアは、家庭用で3割低下した。
東電単独での資金調達や成長分野への投資には限界があり、他事業者との提携は不可欠だ。発電部門では15年に中部電力と折半出資してJERA(東京)を設立。しかし、その後は「福島事業に金銭的負担を求められるという懸念から(提携先の)十分な理解を得られなかった」(原賠機構)ことが響き、大型提携は打ち出せていない。
賠償などに加えて8兆円の廃炉費用を含めると、事故処理費用は総額23兆4000億円に膨らむ。政府と東電は来年度にも中期経営計画である「総合特別事業計画」の改定に着手する。政府関係者からは国有化の長期化で、東電の経営判断に遅れが出るといった「弊害がある」との声も漏れる。国有化脱却に向け、現実的な道筋を示せるか、正念場が続く。(2024/03/10-10:25)
TEPCO Far Away from Profit Goal 13 Years after Nuclear Accident
Tokyo Electric Power Company Holdings Inc. has a long way to go to achieve its target of profits for financing measures to fulfill its commitment to Fukushima Prefecture related to the March 2011 serious nuclear accident.
Monday will mark 13 years since the massive earthquake and tsunami in northeastern Japan that triggered triple meltdowns at TEPCO's Fukushima No. 1 nuclear power plant in the northeastern Japan prefecture.
To make sure that TEPCO pays compensation to people and organizations affected by the nuclear disaster and keeps supplying electricity stably, the Japanese government virtually nationalized the company in July 2012 by injecting 1 trillion yen in it for a 50.1 pct equity stake in terms of voting rights, instead of opting to let the firm go bankrupt.
A scheme has been established in which Nuclear Damage Compensation and Decommissioning Facilitation Corp. uses government bonds provided from the state to cover compensation costs. TEPCO needs to repay the money to the government-backed organization.
Paying compensation, promoting the reconstruction of Fukushima and decommissioning the Fukushima No. 1 plant are major tasks of the company since the nuclear accident.
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