2024.01.13 07:11Nation

輪島の老舗酒造、再建に葛藤 17年前を上回る惨状―8代目蔵元「人は戻るのか」・能登地震

 能登半島地震は、地元の日本酒醸造元にも甚大な被害を与えた。石川県輪島市で明治から続く造り酒屋「中島酒造店」では、約17年前の地震で全壊、再建した蔵が再び倒壊。8代目蔵元で杜氏(とうじ)の中島遼太郎さん(35)は「日本酒は造りたいが、もう一度地震が来るならここでやる意味はあるのだろうか」と再建への葛藤を漏らす。
 約9年前、先代の父浩司さんが60歳で急逝し、中島さんは26歳で後を継いだ。主力は「能登末廣(すえひろ)」。所有する山の井戸水、県産米などにこだわり、地元の人を中心に愛されてきた。観光客からも人気を博し、販路をインターネット通販にも広げた。
 「うちのお酒だからと飲み続けてくれる人たちがいた。それが心の支えで、一番うれしいことだった」。中島さんはこう振り返る。
 2007年3月の能登半島地震では複数の蔵が全壊した。父は廃業も考えたというが、ファンの励ましの声が後押しとなって立て直した。継いだ中島さんも品質をさらに追求。味が評判となった中、再び地震に見舞われた。
 今回の被害は前回の比ではなかった。店舗も全壊し、約4500リットルの複数の醸造・貯蔵タンクが屋根の下敷きとなり、前回は無事だったタンクも一部が裂けた。倒壊した蔵にあった、酒造りに必要なこうじを育てるための室(むろ)や道具も多くが駄目になった。
 目を覆うほどの惨状に「今は何をすべきか考えられる状況にない」。比較的被害が少なかった蔵で寝泊まりしながら無傷の酒瓶がないかと探すなど、片付けをしている。
 「輪島はもともと高齢化が進む地域で、避難した若者も震災後には帰ってこないと思う。地元で今後どのくらい飲んでくれる人がいるか」と不安が頭をもたげる。一方で、「地元の人に愛されたお酒だからこそ、やっぱり顔を知っている人に飲んでほしい」とも。考えは行きつ戻りつする。(2024/01/13-07:11)

2024.01.13 07:11Nation

150-Yr-Old Sake Brewer at A Loss after Earthquake Devastation


Ryotaro Nakashima, the 35-year-old owner of a long-established sake brewer devastated by the Jan. 1 earthquake that struck central Japan, has mixed feelings about rebuilding his business.
   Nakashima is the eighth-generation owner and "toji" master brewer of Nakashima Shuzoten in the city of Wajima, Ishikawa Prefecture, that has been in business for more than 150 years.
   Its key brewing building, reconstructed after it was destroyed by an earthquake 17 years ago, collapsed again in the 7.6-magnitude New Year's Day quake. Wajima is one of the municipalities hit hardest by the latest temblor.
   "I want to make sake, but I wonder if there's any point in doing business here if there's going to be yet another earthquake," Nakashima said.
   About nine years ago, Nakashima succeeded his father, Koji, the seventh-generation owner, who died suddenly at age 60. Nakashima was 26 at the time.

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