「兄に会いたい」初めて口に　犠牲院長の妹、遺族集える場を―大阪ビル放火１７日で２年

　大阪市北区の雑居ビルに入るクリニックで２６人が犠牲となった放火殺人事件は、１７日で発生から２年を迎えた。亡くなった院長の西沢弘太郎さん＝当時（４９）＝の妹、伸子さん（４６）は今月、将来的に他の遺族らも集える場になればとの思いで追悼コンサートを企画。事件後初めて、「兄に会いたい」と口に出すことができた。
　突然の死に、これまで実感が湧かなかった。３日に大阪市内で開かれたピアノコンサート。クリニックの元患者ら約４０人を前に、「あんなことがなければ良かった。あなたに会いたいです」と弘太郎さんに語り掛けるように話し、「私はこちらで私らしく生きます」と続けた。
　事件後、元患者らとの交流を続け、かつて弘太郎さんも学んだ兵庫県の公認心理師と共同で、相談者の話に耳を傾けるカフェを営む。「話を聞いてもらえて良かった」との声も届くようになった。来年には被害者支援員の養成講座を受講すると決めている。加害者支援にも目を向け、出所者に働く場を提供するプロジェクトの関係者ともやりとりを重ねる。
　自身の感情の変化にも向き合った。「事件当時の映像などを見ると、昨年とは異なり、今年はしんどかった。でも、それを感じられる自分で良かったと思う」。元患者や友人らとの関わり合いで、「少しずつ傷が癒えている」との感覚もある。
　そんな中、常に気がかりだったのは、いまだに関わりを持てない他の遺族の存在だ。９月中旬に傍聴した京都アニメーション放火殺人事件の公判で目に飛び込んできたのは、大勢の遺族らの姿。大阪の事件でも、「こうした方が今もたくさんいる。これを忘れてはいけない」と再確認した。
　ピアニストの友人と企画したコンサートに込めたのは、「悲しみに浸るのではなく、前向きになれる場に」との思いだ。悲しい内容のピアノ曲も、希望を感じさせる温かな音色に聞こえた。兵庫県の４０代の元患者男性は「親しかった患者仲間に思いをはせた」と表情を和らげた。
　「何年か先でも大丈夫。気持ちを寄せ合い、一歩でも進める機会になれば」。伸子さんは、他の遺族がいつでも参加できるよう、コンサートを毎年開くと誓う。自身が経験したように、事件を通じて生まれた新たな出会いが、心の支えになるはずだと信じている。（2023/12/17-00:17）

With Sunday marking two years of an arson attack in Osaka that killed over 20 people, a memorial piano concert for the victims was held in the western Japan city in early December.
   The 46-year-old younger sister of Kotaro Nishizawa, one of the victims, who ran a clinic specializing in psychosomatic medicine and psychiatry, organized the concert, hoping that similar events will be held in the future as well to bring together bereaved relatives.
   In the attack, which occurred on the morning of Dec. 17, 2021, a man set fire at the clinic, located on the fourth floor of a multitenant building in Kita Ward of Osaka. A total of 26 people, including the clinic head, then 49, and patients of the clinic, lost their lives in the incident. The attacker, who was a former patient of the clinic, also died.
   The sudden death of Kotaro has not seemed real to his sister, Nobuko.
   "I wish such a thing had not happened. I want to see you," she said at the memorial concert, as if she was talking to her deceased brother.