骨太方針、にじむ「安倍カラー」 岸田首相、財政・安保で配慮迫られ
岸田文雄首相が就任後初となる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」策定をめぐり、自民党の安倍晋三元首相に押されている。安倍氏は自身の路線を反映させようと、財政や安全保障政策に関して次々と発信。最大派閥を率い、保守派に影響力を持つだけに、首相も政権運営を考えて配慮せざるを得ない状況だ。
骨太は7日に閣議決定の方向。安倍氏がこだわった一つが防衛費の増額だ。骨太原案に目標の規模や年限が書き込まれていなかったことに対し、2日の安倍派会合で「しっかり国家意思を示すべきだ」と注文を付けた。
首相は5月下旬の日米首脳会談で、防衛費の「相当な増額」を表明した。ただ、防衛力の急速な強化に慎重な公明党の存在もあり、その後も具体的な数字は挙げず、国会答弁でも「まずは何が必要か積み上げる」と繰り返した。
安倍氏の要求を受け、政府が3日に示した修正版は「5年以内」と明示。さらに、安倍氏らが国内総生産(GDP)比2%を増額の目安としていることを踏まえ、北大西洋条約機構(NATO)諸国が国防予算をGDP比2%以上とする目標の達成を急いでいるという説明を本文に挿入した。
骨太原案は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化に関し、昨年度の骨太にあった「2025年度」の目標年次を明記しなかった。「カレンダーベースの目標設定はすべきでない」との安倍氏らの主張を受けたものだ。
首相自身は財政政策の大きな転換に否定的。原案は財政健全化の「旗」は下ろさない、として目標を維持する形を取ったが、「現行の目標年度によりマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」とも記し、安倍氏の顔を立てた。
◇アベノミクスにこだわり
安倍氏が発信を強めるのは、自身の経済政策アベノミクスを継続させたい思惑があるためとみられる。現在の円安や物価高には「アベノミクスの負の遺産」との見方も出ており、政府関係者は「路線を修正させまいと必死なのだろう」と語る。
「君はアベノミクスを批判するのか」。安倍氏は5月中旬、骨太に関する自民党財政健全化推進本部の提言の取りまとめに当たった安倍派の越智隆雄元内閣府副大臣にこう迫った。提言の当初案には円安に批判的な表現が入っており、これに不満を抱いたもようだ。
防衛力強化や財政政策の議論は参院選後に本格化する見通し。安倍氏が一段と前に出れば、党内の路線対立につながりかねない。ある自民党関係者は「安倍氏と対立すれば政権は安定せず、首相にとっては『忍』の一字が続く」と予想する。(2022/06/06-07:03)
Ex-PM Abe Pushing to Influence Key Economic Policy Guidelines
Former Japanese Prime Minister Shinzo Abe is pushing to influence the government's annual basic economic and fiscal guidelines in the fields of fiscal policy and defense spending.
Fumio Kishida, the incumbent prime minister who took office last October, is being pressured to tweak the so-called "honebuto" guidelines to please Abe, who wields power as the leader of the biggest faction in the ruling Liberal Democratic Party and holds influence among conservative LDP lawmakers.
The government plans to adopt the guidelines at a cabinet meeting on Tuesday.
Abe is particularly interested in boosting Japan's defense budget.
Kishida, meeting with U.S. President Joe Biden in late May, pledged to "substantially increase" the Japanese government's defense spending. But he avoided clarifying by how much the spending should be raised so as not to strain relations with Komeito, the LDP's coalition partner, which is cautious about rapidly boosting Japan's defense capability.
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