遠いGAFAの背中 ヤフー・LINE統合、にじむ孫氏の危機感
検索サービス大手「ヤフー」を展開するZホールディングス(HD)と、無料対話アプリ大手「LINE」が経営統合で合意した。金融や通信販売も含めインターネットを通じたサービス利用者が1億人規模に上る国内最大のIT企業が誕生する。世界各地で盤石の顧客基盤を持つ巨大IT企業「GAFA」への危機感が統合を急がせた格好だが、その牙城を切り崩すのは容易ではない。
◇時価総額、圧倒的な差
「ヤフーでは規模が足りない。このままではGAFAにのみ込まれる」。ZHDを傘下に収めるソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長の危機感を側近はこう代弁する。
米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社は頭文字をとってGAFAと呼ばれる。あらゆるサービスを一つのネット上の基盤「プラットフォーム」に集約することで、顧客から膨大なデータを吸い上げ、個人の消費動向などを分析。効果的な広告などで高収益を上げている。規模が拡大するほどデータが集まり、利便性も高まる「ネットワーク効果」が成長の原動力だ。
例えば、フェイスブックは約24億人の利用者を抱え、株式時価総額は約60兆円。ZHDとLINEは計3兆円超にとどまり、圧倒的な差がある。
近年では、中国政府の後押しや巨大な国内市場を背景に、バイドゥ、アリババグループ、テンセントの「BAT」と呼ばれる中国勢の急成長も目覚ましい。
投資の目利きを自任する孫氏は2000年、当時は無名に近いアリババへ20億円を出資。その後も出資を重ねた結果、SBGが保有するアリババ株の価値は約13兆円にまで膨らんだ。
孫氏は、顧客データを囲い込むビジネスの「うまみ」を痛感。ZHDの川辺健太郎社長によると、今回の統合に孫氏は「100%賛成」しており、「日本、アジアのためにスピーディーにやるべきだ」と語ったという。
◇アジアで成長、第三極目指す
ヤフーとLINEは多くの国民が利用する有名企業だが、高齢化が加速する人口減少社会での成長は限られる。国内需要に頼る「内弁慶」企業から脱却するためには、海外戦略が大きな課題となる。
LINEは現在、台湾、タイ、インドネシアでも主力の対話アプリに加え、決済、ニュース配信といったサービスを展開している。同社の出沢剛社長は「まずはアジアで成長し、GAFAやBATに次ぐ第三極を目指す」と将来像を語る。
「反省はするが、萎縮はしない」。出資する米シェアオフィス大手ウィーワークの経営不振を受け、SBGは19年9月中間決算で営業赤字に転落したが、孫氏は強気の姿勢を崩さなかった。世界を相手に戦うには、利用者を囲い込む自社の「経済圏」の拡大が欠かせない。M&A(合併・買収)や提携など、GAFA追撃に向けた孫氏のさらなる一手にも注目が集まりそうだ。(2019/11/18-20:06)
FOCUS: Sense of Crisis over GAFA behind Yahoo Japan-Line Integration
A sense of crisis about the strength of overseas information technology giants such as Amazon.com Inc. apparently hurried Yahoo Japan Corp.'s parent, Z Holdings Corp. , and free messaging app provider Line Corp. into deciding on their business integration to create Japan's biggest internet service group.
But it will not be easy for the new Japanese group having some 100 million users in total to break the dominance of Google LLC, Apple Inc., Facebook Inc. and Amazon.com, collectively known as GAFA, which have solid customer bases around the world, industry watchers said.
Huge Capitalization Gap
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