2025-01-15 20:48

芥川賞に安堂さんと鈴木さん=直木賞は伊与原さん

 第172回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は安堂ホセさん(30)の「DTOPIA(デートピア)」と鈴木結生さん(23)の「ゲーテはすべてを言った」に決まった。直木賞は伊与原新さん(52)の「藍を継ぐ海」が選ばれた。贈呈式は2月下旬に都内で行われ、正賞の時計と副賞100万円が贈られる。
 安堂さんは候補3度目で受賞。作品は、テレビのリアリティーショーを舞台に人種や国籍、セクシュアリティーなど属性の意味を問い直す。芥川賞選考委員の島田雅彦さんは「カラード(黒人)やセクシュアルマイノリティーへの差別や偏見というテーマが、逐一のエピソードにしっかり落とし込まれている」と評価した。
 鈴木さんは初候補で受賞。作品は、ドイツの文豪ゲーテの名言に出合った主人公が、その出典を探し求める物語。島田さんは「登場人物がしっかり動き、立体化しているのが魅力。エンタメとして完成度が高かった」と話した。
 伊与原さんは候補2度目で受賞。作品は、科学をテーマに絡ませながら多様な人間模様を描いた短編5作を収める。直木賞選考委員の角田光代さんは「一作ごとにテーマが違い、それぞれの土地やそこに暮らす人たちの姿をよく調べて丁寧に描いた」と、伊与原さんの努力をたたえた。 
 
 ◇安堂ホセさんの略歴
 安堂 ホセさん(あんどう・ほせ)94年、東京都生まれ。22年「ジャクソンひとり」で文芸賞を受賞しデビュー。作品に「迷彩色の男」。
 
 ◇鈴木結生さんの略歴
 鈴木 結生さん(すずき・ゆうい)01年生まれ、福島県郡山市出身。西南学院大大学院生。24年「人にはどれほどの本がいるか」で林芙美子文学賞佳作を受賞。
 
 ◇伊与原新さんの略歴
 伊与原 新さん(いよはら・しん)72年、大阪府吹田市生まれ。東京大大学院博士課程修了。10年「お台場アイランドベイビー」で横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。19年「月まで三キロ」で新田次郎文学賞を受賞。他の作品に「宙(そら)わたる教室」など。東京都在住。
[時事通信社]

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