被災体験、次世代に=友人亡くした高校教諭―東北で防災教育・神戸―阪神大震災30年
私立六甲学院中学校・高等学校(神戸市灘区)の深尾孝道教諭(49)は30年前の阪神大震災で被災し、その体験を基に防災教育に取り組んでいる。生徒たちが東日本大震災の被災地に足を運び、災害の悲惨さを知った上で、「災害対策を自分事として捉えてほしい」と願う。
当時受験生だった深尾さんは、地震で兵庫県芦屋市の自宅が半壊。同県内の祖父宅に避難中、同じ予備校に通っていた友人とその家族が土砂崩れで亡くなったことをテレビ報道で知った。「身近な人を亡くした経験がなく、パニックになった。うそであってほしいと願った」。悲しみは今も癒えず、「想像を絶することが起きるという怖さを知らされた」と振り返る。
昨年から始まった中学2年生の防災教育では、自身の被災経験を生かし、カリキュラム作りなどで中心的な役割を果たした。東北地方で行うスキー合宿と併せて実施し、東日本大震災が起きた宮城県の被災地を訪れる。
心掛けたのは「悲惨な状況を見て、単に『ふーん』という感想で終わらせない」こと。「被災時に、つらい思いを最小限にすることが重要だと感じた。自分で生き抜くすべを身に付けてほしい」との考えから、同県東松島市の防災学習施設「KIBOTCHA(キボッチャ)」で陸上自衛隊OBからロープワークや応急担架の作製といったサバイバル技術を学ぶ。
生徒たちは、当時多くの被災者を受け入れた南三陸ホテル観洋(同県南三陸町)に宿泊。同ホテルが企画する「語り部バス」に乗って町内を回り、被災したスタッフから当時の話も聞く。
南海トラフ地震など巨大災害の危険は常に存在している。深尾さんは、防災教育を通じて「災害時にちょっとでも周りを助けたり、生き延びたりすることができたら」と期待を込めた。
[時事通信社]
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