「供述、真摯に耳傾けず」=袴田さん無罪で検証結果―証拠の保管把握「不十分」・最高検
1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で袴田巌さん(88)の再審無罪が確定したことを受け、最高検は26日、捜査や公判などに関する検証結果を公表した。検察官による取り調べについて「供述に真摯(しんし)に耳を傾けたとは言えない」とし、証拠の保管・把握も不十分だったとの認識を示した。
最高検の山元裕史次長検事は同日記者会見し、「袴田巌さん、姉のひで子さんが言葉には言い表せない、つらいお心持ちで日々を過ごされてきたことについては、大変申し訳なく思っている」と謝罪した。
最高検は、県警の取り調べについて「深夜、長時間、威嚇的なものなど多岐にわたる問題点が存在し、任意性を欠いた」と指摘。検察官は実態を把握し、自らの取り調べに影響しないよう十分な措置を講じた上で、任意性の確保に努める必要があったと振り返った。
また、「検察官も袴田さんを犯人と決め付けたかのような発言をしながら自白を求めた」と言及。今後、犯人との心証を抱いても、供述の信用性を愚直に確かめる姿勢が求められるとした。
再審無罪の決め手となった「5点の衣類」などのネガフィルムや取り調べ録音テープについては、検察官が当初、存在を認識していなかったと説明。後に発見されたが意図的に隠蔽(いんぺい)したものではなく、「捜査資料や証拠の保管・把握が不十分だった」との見解を示した。
第1次再審請求審で5点の衣類の写真などの証拠開示に応じなかった点については、証拠提出する前提で探索していれば審理が促進されていた可能性があったと認めた。
一方、第2次請求審での即時抗告は、科学的に誤った認定を是正するために必要だったとして、「問題とは認められない」と判断。再審公判での有罪立証についても「相当だった」とした。判決が証拠の捏造(ねつぞう)を認定したことについては、「現実的にあり得ない」と強く否定した。
[時事通信社]
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