SNS影響、単純化に懸念=背景にメディア不信―ネットと選挙・日大教授
衆院選や東京、兵庫の知事選など、今年行われた選挙では、SNSが大きな影響を与えたと指摘されている。インターネットと選挙の関係に詳しい日本大の西田亮介教授(社会学)は、マスメディアに対する不信感が背景にあるとする一方、選挙ごとに制度や構図、SNSの使われ方などが異なっているとして「ひとまとめにして『SNSが影響した』とする論調には懸念がある」と話す。
西田教授は、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が165万票余りを獲得した都知事選について、「当選したのは小池(百合子)さんで、結局は現職有利という従来の知事選の常識が踏襲された」と分析。一方、再選した兵庫県の斎藤元彦知事は、一部自治体を除きほぼ全域でトップだったと指摘し、「高齢者が多いような非都市部でも票を集めており、単純に『SNSが効いた』と言っていいのか」と疑問を呈した。
その上で、有権者のSNSに対する期待感は「マスコミ不信と表裏一体」との見方を示した。新聞やテレビなどのマスメディアは選挙報道の在り方を「長年工夫してこなかった」と批判。公選法や放送法を理由に選挙期間に入ると横並びの報道が続いていた中で、規制が少ないネット上での自由な表現が受け入れられ、「マスコミ不信がより強く感じられるのではないか」と述べた。
また、候補者本人や陣営側ではなく、動画を撮影、公開するユーチューバーらに収益が入る構造になっていることに注目。「他者の収益化」を可能にするプラットフォームにより、「経済的インセンティブが選挙結果をゆがめかねない状況だが、対策はとても難しい」と懸念を示した。
総務省情報通信政策研究所が昨年行った調査によると、平日の情報通信メディアの平均利用時間は新聞5.2分、テレビ135.0分なのに対し、ネットは194.2分と大幅に上回った。西田教授は「多くの人にとって情報接触の中心はネットになっており、今後SNSの影響力が強まっていくことは明らかだ」と強調。「マスメディアには、報道表現のアップデートや手法の革新、ニュースバリューの見直しが望まれる」と語った。
[時事通信社]
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