日本シリーズ取材証没収で物議=WS放映のフジテレビを「処分」―NPB・クローズアップ
今季のプロ野球日本シリーズは、セ・リーグ3位のDeNAが、パ・リーグ王者のソフトバンクを破って優勝した。熱戦が続いた裏で、主催者の日本野球機構(NPB)がフジテレビの取材証を没収したことが物議を醸した。
理由は、フジテレビが日本シリーズの試合と同じ時間帯に、米大リーグのドジャースの大谷翔平がプレーしたワールドシリーズ(WS)のダイジェスト番組を放送したから。NPBは「日本シリーズはプロ野球にとって最大の価値。中継はテレビ局、スポンサー、12球団、全ての関係者の協力で成り立っている。その協力体制が損なわれる、危うくするような状況であった」と説明した。ただ、この「処分」が結果的に放送局の番組編成に口を挟む形になったのは否めない。
報道の自由に詳しいベリーベスト法律事務所の杉山大介弁護士は、取材証の没収は「直ちに違法とは言えない」とした上で、「視聴者がどれを求めてどれを楽しむかは本来自由なはず。少なくとも自由主義社会とは反した思考が、(NPBの)組織内部にあるように感じられた」と指摘する。
背景には過熱した「大谷人気」がある。史上初の50本塁打、50盗塁を達成し、WS後にシーズン最優秀選手(MVP)を受賞。ビデオリサーチの発表では、10月26日から日本で5試合が放送されたWSは、朝の生中継だけでも推計で5656万2000人が視聴した。フジテレビが注目度の高いWSを生中継に加えて録画でも放映したのは、営利企業としては当然の判断だった。
野球を盛り上げるという意味では、NPBと放送局は同じ立場。もう少し歩み寄れる余地はなかったのか。シーズン最後を飾る華やかなイベントで、後味の悪さが残った。
[時事通信社]
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