兼業で過労自殺=ストレス重複、初の総合評価―労基署
愛知県の男性=当時(60)=がうつ病を発症して自殺したのは、掛け持ちしていた仕事のストレスが重なったためだとして、名古屋北労働基準監督署が労災認定していたことが16日、分かった。決定は4月10日付。遺族の代理人弁護士が取材に明らかにした。
厚生労働省によると、複数職場での労働時間や心理的負荷を総合的に評価できるようになった2020年の労災保険法改正以降、心理的負荷の総合評価により過労自殺とした認定は初めてとみられる。
遺族代理人の立野嘉英弁護士によると、男性は橋梁(きょうりょう)の設計や調査の専門家で、19年12月から岐阜大に研究員として勤務し、アフリカで技術者を育成するプロジェクトに従事。同時期に航空測量大手「パスコ」(東京)でも働いていたが、21年5月に自殺した。
男性は、岐阜大で上司だった准教授から、現地担当者とのやりとりについて「英語メールの確認作業ばかりで、改善がほとんどない」「プロジェクトが前に進んでいない」などとメールで複数回、厳しく指導された。問い合わせに返信をもらえないこともあった。
一方、パスコでは自治体から受注した橋梁の点検調査を男性が1人で担当。上司の異動で社内評価が低くなり、減給をほのめかされたこともあったという。
名古屋北労基署は、岐阜大の准教授について、男性の立場を尊重しないなど不適切な対応があったと指摘。パスコでも孤立感を深めていたなどとし、いずれの心理的負荷も「中」だが、総合評価すると「強」に当たると認定した。
立野氏は「国は副業、兼業を推進するが、複数の職場で生じるストレスの蓄積について、どのように健康管理するか議論を深める必要がある」と話した。
岐阜大の話 適切に対応しており、労基署から指導を受けていない。
パスコの話 労基署から直接的な指導はなく、詳細を確認している。
[時事通信社]
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