サポーターに三つの「願い」=引退の興梠―J1浦和
クラブへの深い愛情があるからこそのメッセージだった。今季限りで現役を引退したJ1浦和の元日本代表FW興梠慎三(38)。8日に埼玉スタジアムで行われた最終節でのセレモニーで、サポーターに向けて「僕から三つだけお願いがあります」。そう言って胸中を明かした。
まず触れたのが、忘れてはならない出来事。昨年の天皇杯全日本選手権で浦和サポーターの一部が暴徒化し、今年度の天皇杯出場資格が剥奪される前代未聞の事態を招いた。「若い選手のチャンスをつぶしてしまったことを、心に刻んでおいてほしい」と強く訴えた。
浦和のサポーターは繰り返し問題行為を起こしてきた過去がある。特に熱狂的な人々が集まるゴール裏に視線を移し、「もうこれ以上、浦和を愛する人を失いたくない。あなたたちは僕にとってのヒーロー。格好いい言動でサポートしていただけたらいい」。二つ目の「願い」は端的。タイトルが遠いチームの現状に触れ、彼らに精いっぱいの後押しを呼び掛けた。
2013年に鹿島から浦和に移籍した当時の心境を明かした。強いライバル関係にある両クラブ。「お前みたいなやつが来るな」。心ない手紙を受け取ったこともあったが、「プレーで見返してやろうと。誰よりも強い気持ちで浦和に来た」。自分の応援歌「チャント」を聞いたとき、初めて認めてくれた気がした。
最後に、その応援歌をリクエスト。「もう聞くことがないであろうチャントを、一度だけ聞かせてもらえないか」。思いを受け取った約5万人の観客は、しばし声を張り上げた。J1歴代2位の通算168得点を刻むなど多くの金字塔を打ち立てたエースはかみしめるように聞き入り、感謝の言葉を残してピッチを去った。
[時事通信社]
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