被爆証言の重要性示す=核廃絶へ「記憶」継承を―ノーベル委員会委員長インタビュー・被団協平和賞
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞授賞式を10日に控え、ノルウェー・ノーベル賞委員会のフリードネス委員長(40)が9日、時事通信のインタビューに応じた。被団協について、被爆証言によって「核のタブー」を維持する重要な役割を果たしてきたと評価。歴史の過ちを繰り返さないため「記憶の継承」が重要だと強調した。主なやりとりは次の通り。
―被爆者運動をどう評価するか。授賞式を通じ世界に何を伝えたいか。
被爆者たちの証言活動の重要性に焦点を当てたい。彼らは「核のタブー」を維持するという他に類のない役割を担ってきた。原爆投下を実際に体験した人の話は苦痛に満ちているが、同時に(人類の)強さと(困難からの)回復力の象徴でもある。被害者であるだけでなく、生き残った者として未来に貢献している。
―過去にも反核団体の受賞はあったが、廃絶に近づいたとは言い難い。変化は期待できるか。
時代や世界情勢は変わっている。変化に対応しながら核削減を追求するには新たな方策が必要だ。2017年の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)への授与は核不拡散に焦点を当て、今年は被爆証言。核関連の授賞は今後も続くと予想される。
―世界の安保環境は悪化し、核使用の脅威も増している。核廃絶は非現実的との声も根強い。
「安全」を核兵器に依存したままでは、文明は破壊されてしまう。政治的意志や技術上の過ちで核兵器が使われる可能性がある。核をなくすというビジョンを持ち続けるべきだ。道のりは長く困難だが、希望を失ってはならない。そのために被爆証言が重要だ。核兵器が使われればどのような結果が及ぼされるかを記憶し、次世代に継承していく必要がある。
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◇ヨルゲン・ワトネ・フリードネス氏略歴
ヨルゲン・ワトネ・フリードネス氏 84年ノルウェー・ベルゲン生まれ。英ヨーク大で国際政治学修士号を取得。NGO勤務を経て、11年に無差別テロ事件が起きたノルウェー・ウトヤ島の再建活動に参加。21年にノーベル賞委員会メンバーとなり、24年から委員長。
[時事通信社]
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