「力の空白」、混迷拍車の恐れ=シリア情勢安定支援も消極関与―米
【ワシントン時事】バイデン米政権は、シリアのアサド政権崩壊を歓迎し、反体制派勢力や周辺国と協力して情勢安定化に取り組む構えだ。だが、新政府樹立への積極的な関与は控えるとみられ、トランプ次期米大統領も「不介入」を主張。アサド政権の後ろ盾だったロシアやイランの影響力も低下する中、シリアに「力の空白」が生じ、中東情勢の混迷に拍車が掛かる恐れもある。
「米国は、友好国やシリアの利害関係者がリスクを管理する機会をつかむために支援する」。バイデン氏は8日、ホワイトハウスで国民向けに演説し、シリアの情勢安定化に努める考えを強調した。
バイデン政権の懸念は、かつてシリアで勢力を拡大した過激派組織「イスラム国」(IS)が、権力不在に乗じて再び勢いを取り戻すことだ。バイデン氏は演説で、IS掃討のためにシリア駐留米軍を維持する意向を表明。米軍は8日、シリアのIS拠点など75カ所を空爆し、ISが再び台頭することを阻止する決意を国内外に示した。
一方、シリアの新政府樹立を巡っては「シリア国民自身が決めることになる」と述べ、各勢力の取り組みを注視する考えだ。「あらゆるシリアの勢力に関与する」とも語り、反体制派勢力との対話に前向きな姿勢を示している。
アサド政権打倒を主導した「シャーム解放機構」(HTS、旧ヌスラ戦線)について、米政府は2018年に「外国テロ組織」に指定。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によれば、反体制派が攻勢を強める中、米側はトルコ政府を通じてHTSを含む勢力と連絡を取り合っていたが、関与を強めようにも、積極的には動けない事情がある。
「米国は関係を持つべきではない」。アサド政権崩壊前の7日、トランプ氏は自身のSNSで、米国のシリア介入に反対すると主張した。トランプ氏は1期目、シリア駐留米軍の撤収を目指したが断念。来年1月の大統領就任後も「不介入」の姿勢を堅持する可能性が高い。シリア国民は、米国やロシアの関与が薄まる中で、新たな国造りを迫られそうだ。
[時事通信社]
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