部隊は「利用された被害者」=軍上層部、何度も現場に圧力―非常戒厳、10日で1週間
【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領が「非常戒厳」を宣言し、10日で1週間。国会へ投入された軍部隊の団長は「(部隊員は)金龍顕前国防相に利用されたもっとも気の毒な被害者だ」と主張した。証言から、戒厳軍に司令部が何度も制圧を促していた状況が浮かび上がった。
◇無能な「暗殺部隊」指揮官
「私は無能で無責任な指揮官だ。戦闘でこんな命令をしていたら、全員死んでいただろう」。陸軍の「707特殊任務団」のキム・ヒョンテ団長は9日、記者会見し、時折涙を見せながら悔しさをにじませた。
707特殊任務団は、北朝鮮首脳部の暗殺を任務とする特殊部隊。名前と顔を明らかにし、会見するのは極めて異例だ。
「国会を封鎖せよ」。命令を受け、キム氏はヘリで一番初めに国会に到着し、現場で指揮に当たったと説明。国会入り口の門で兵士の進入を防ごうとする関係者ともみ合ったり、窓ガラスを割って建物に入ったりすることを、現場に指示したのは自分だと認めた。
キム氏自身、「戒厳に関する知識がなく、国会の活動を保障しなければいけないことをよく知らなかった」という。戒厳軍の進入を阻もうとする人たちに、「戒厳司令部に抗議してくれ」と言うことしかできなかった。
◇「引きずり出せ」
3日夜、非常戒厳宣言を受け、戒厳解除を求める決議案を可決させるため、野党を中心とする国会議員らは国会に向かった。
「国会議員が(決議を可決させる)150人を超えたらだめだ。引きずり出せるか」。現場の兵士らは強い措置を取らず、事実上議員の登院を黙認していたという証言も出ているが、現場を指揮するキム氏には、郭種根特殊戦司令官から、何度も電話がかかってきたという。
国会への戒厳軍派遣を巡ってはこれまでに、金前国防相が指示したという複数の証言が出ている。キム氏は、電話をしてきたのは司令官だが「金前国防相の指示だったようだ」と話した。
◇「法的問題」と指示背く
戒厳軍は、中央選挙管理委員会庁舎にも送られた。金前国防相は韓国紙・東亜日報に「多くの国民が(今年4月の総選挙の)不正疑惑を提起しており、今後捜査するかどうかを判断するため」だったと説明した。一部保守系ユーチューバーの主張が念頭にあったとみられる。
KBSテレビによると、呂寅兄前防諜(ぼうちょう)司令官は、同司令部に対し、中央選管の電算室の出入りを統制するよう命令を下した。ただ、法務将校らは法的な問題を指摘。一部要員は出動したものの離れた場所で待機し、指示に従わなかったという。
[時事通信社]
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