ロシア、中東での影響力低下=アサド政権崩壊で痛手
ロシアのプーチン政権にとって、後ろ盾となってきたシリアのアサド政権の崩壊は大きな痛手だ。ウクライナ侵攻に軍事力を割かれたロシアは、シリア反体制派勢力の大規模攻勢からアサド政権を守り切ることができなかった。アサド大統領の亡命を受け入れたが、ロシアの中東での影響力は低下しそうだ。
ロシアは2015年にシリア内戦に軍事介入。14年のウクライナ南部クリミア半島併合で欧米との対立が決定的となったプーチン政権は、中東への関与を強めることで米国に対抗し、国際社会での存在感を示そうとした。
その思惑通り、ロシアの後押しを受けたアサド政権軍が反体制派を軍事的に圧倒。プーチン大統領は17年末、シリアを訪問して「ロシア軍はシリア軍と共に国際テロ組織を打ち負かした」と主張し、「勝利」をアピールした。
ロシアはシリア西部タルトスの海軍基地と北西部ラタキア近郊の空軍基地に軍を駐留させ、中東やアフリカをにらむ戦略的な軍事拠点として活用。シリア和平を巡っては、国連主導の協議とは別の枠組みでトルコやイランと仲介を試み、影響力拡大を図った。
シリア内戦がアサド政権優位でこう着する中、ロシアは22年にウクライナ侵攻を開始。長期化する侵攻に戦力の多くを投入し、シリアは手薄になっていた。先月末に始まったシリア反体制派の大規模攻勢を受け、ロシアも空爆で政権軍を支援したが、状況は変えられなかった。
ロシア外務省は8日の声明で、アサド氏が内戦の当事者らと交渉した結果、辞任を決めたとし、「ロシアは交渉に参加しなかった」と主張。長年の関与にもかかわらず、形勢不利になると一転して、シリア情勢から距離を取るかのような姿勢をにじませた。
ロシアにとっては、シリア国内の基地使用を継続できるかが今後の焦点だ。ロシア大統領府筋はタス通信に「ロシア当局者はシリアの反体制派側と接触しており、その指導者らはロシアの基地や外交施設の安全を保証してきた」と説明した。だが、情勢が混乱し基地を使用できなくなれば、プーチン政権にとって打撃となりそうだ。
[時事通信社]
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