殺しの実行役に15歳未満 ギャングの「ビジネスモデル」 スウェーデン
【エレブロ(スウェーデン)AFP=時事】「兄貴、初めての殺しが待ち切れないぜ」。こんなメッセージをインスタグラムに投稿していたのは、スウェーデンの11歳男児だ。これに19歳の指示役は「気合いを入れておけよ。必ず出番は来る」と応じていた。≪写真はスウェーデンのエレブロを歩く子どもたち≫
同国のギャングは、幼過ぎて刑事責任を問われない子どもを殺し屋として、チャットアプリ経由で雇っている。
AFPが確認した警察の捜査報告書によると、この事件は西部ベルムランド県で昨年発生したもの。指示役は続けて、男児に殺しの報酬として15万クローナ(約206万円)を提示し、衣服や犯行現場までの交通手段を提供したとされる。
この事件では、18~20歳の男4人が、11~17歳の未成年者4人を犯罪組織の仕事に勧誘した容疑を掛けられている。全員が犯行前に逮捕された。
予備調査によれば、男や少年たちが互いに武器を持ってポーズを取った写真を送り合っていたことを示すスクリーンショットも見つかった。中には上半身裸になり、目出し帽で顔を隠している者もいた。
11歳の男児は警察の取り調べに対し、「クール」に見せ掛けて「恐怖心を表に出さないように」冒頭のメッセージを書いたと供述した。
同様の事件は本件にとどまらない。
スウェーデンでは近年、犯罪組織同士の報復や違法薬物の販売をめぐる縄張り争いに絡んだ銃撃事件や爆破事件が急増。昨年は銃撃事件で53人が死亡した。公共の場での銃撃事件も増加しており、罪のない市民も犠牲になっている。
■「殺し屋募集」
スウェーデンの裏社会の犯罪は組織化・複雑化している。ギャングの幹部は海外から、暗号化機能を備えたテレグラムやスナップチャット、シグナルなどのメッセージアプリを使用し、刑事責任を問われない15歳未満の子どもたちを勧誘している。
スウェーデン警察国家案件対応局のヨハン・オルソン局長は先月の会見で、「仕事の指示内容はディスカッション・フォーラムで公開され、ある種の求人市場のように組織化されている。請け負う側の低年齢化も進んでいる」と述べた。
ストックホルム大学のスベン・グラナス教授(犯罪学)はAFPに対し、殺しを下請けさせる際のやりとりは、オンラインを通じてのみ行われると説明した。
近所をぶらぶらしている子どもを捜して、人材として直接勧誘するケースもある。
検察によると、スウェーデンで15歳未満が容疑者となった殺人関連事件は、2023年1~8月の31件から、今年同期は102件に増加した。
グラナス教授によれば、勧誘されるのは学校になじめない子や、依存症問題や注意欠如多動性障害(ADHD)を抱えている子が多い。既に刑罰法令に触れる行為をした「触法少年」であることも多々あるという。
「子どもたちは自分とは何の関係もない争いに勧誘されている。雇われ人にすぎない」と同教授は指摘し、必ずしも元からギャングの構成員だったわけではないと説明した。
国立犯罪予防協議会(BRA)の報告書によれば、殺しの仕事を自ら探し求める子どももいる。目的は金目当てをはじめ、高揚感を味わうため、承認欲求や帰属欲求を満たすためなど、さまざまだ。
専門家はこうした子どもたちについて、派手な服装や忠誠の誓いへの憧れがあると指摘する。
かつてギャング構成員だったビクトル・グレウェさん(25)は、「今は誰もが殺し屋になりがたっている」と述べた。グレウェさんは13歳の時、初めて警察ともめ事を起こした。
グレウェさんは、ティックトックで犯罪者のライフスタイルを美化する一部の「犯罪インフルエンサー」に言及し、「これが子どもたちの憧れとされるのは、非常に悲しいことだ」と話した。
■無慈悲に搾取される若者
首都ストックホルムの西に位置するエレブロの警察署長を務めるトニー・キロガ氏はAFPの取材に対し、「若者は無慈悲に搾取されている」と指摘。
犯罪の指示役は、自分たちと犯罪組織の上層部を守り、「自分は一切のリスクを負いたがらない」と述べた。
「彼ら(指示役)はソーシャルメディアで偽名を使って身元を隠し、自分たちと実行役の間にいくつかの防壁を置いている」
エレブロでは、ボランティアの人々が貧困地区を巡回し、子どもたちにギャングの支配下に入ることの危険性について説明している。
22歳の時にギャングを抜けたグレウェさんは、犯罪に手を染めている若者たちは自分が25歳まで生きることはないと思っていると話した。
BRAの報告書によれば、子どもの勧誘はギャングのビジネスモデルの一部になっており、勧誘された子どもは、自分よりもさらに幼い子どもを勧誘する。いったん取り込まれると、簡単には抜け出せない。
キロガ氏は、警察が「終わりのない」争いに立ち向かっていると絶望をあらわにした。【翻訳編集AFPBBNews】
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