戸籍、読み仮名記載に暗雲=改正法対応「間に合わない」―自治体から懸念相次ぐ
全国民の戸籍の氏名に読み仮名記載を義務付ける改正戸籍法が来年5月26日に施行される。国は同法に基づき、施行後1年以内に住民からの読み仮名の届け出完了を目指す。ただ、事務を担う市区町村の作業は膨大になる見通し。読み方が間違っていた場合、住民が修正を届け出るという仕組みもあまり知られておらず、自治体からは「間に合わない」と懸念する声が相次いでいる。
同法改正は、行政のデジタル化推進の一環。効率的な個人データの管理や、正確な本人確認につなげる狙いがある。
戸籍事務は、国の代わりに自治体が担うと定められた「法定受託事務」の一つ。市区町村は施行から2、3カ月以内に住民に対し、住民票などを参考に氏名の読み仮名を郵送で通知する。住民は読み方が間違っていればマイナンバーカードの個人向けサイト「マイナポータル」を活用するか、郵送または来庁して修正を届け出る。
しかし、地方側からは、読み仮名登録の業務工程などに関する国の説明は不十分との不満が出ている。国がどこまで経費を負担するかも不透明なまま。受託事務に関する補助金の交付決定は来年4月下旬の見通しで、地方側からは「スケジュールが厳しすぎる」との悲鳴も上がる。
読み仮名について、法務省は反対の意味を示す読み方を認めないなどの判断基準を例示するものの、コールセンターを独自に設ける自治体もある。東京都内のある担当者は「名前は個々人の思い入れが強く丁寧に対応する必要がある」と語る。
人口規模の大きな自治体では特に作業に手間がかかると見込まれる。例えば千葉市は、市民の1割が届け出た場合、対応する部署の業務量は通常の約5倍に上ると試算。「『これは何だ』と役所に聞きに来たり、電話したりする人がいるだろう」(担当者)と予想する。
「(国の対応は)極めて不十分と言わざるを得ない」。全国20政令市の市長で構成する指定都市市長会は今年9月末、読み仮名記載に関する経費の全額負担や補助金交付の前倒し、業務工程の早期提示などを国に訴える緊急要請をまとめた。同様の動きは全国市長会や中核市市長会などにも広まっている。
法務省は今月上旬、自治体の負担軽減のため、市区町村が通知した読み仮名が正しければ国民からの届け出は不要とする方針を示した。ただ、度重なる法相交代もあり、いまだ十分な説明はなく、「国の対応はあまりにもお粗末だ」(群馬県太田市の清水聖義市長)と憤る声も出ている。
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