「年収の壁」、幾重にも=自公国、見直し協議本格化
所得税や社会保険料の負担が生じる「年収の壁」は、国民民主党が引き上げを主張する所得税の課税最低基準103万円の他に106万円、130万円などと幾重にも連なっている。国民民主と自民、公明両党の協議が本格化する中、103万円以外の壁にも見直し論が広がり始めた。
所得税は、課税対象額を算出する際、家族構成や収入などに応じて適用されるさまざまな「控除」を年収から差し引く。最大48万円の「基礎控除」は原則すべての納税者が対象で、給与を企業から受け取る人は最低55万円の「給与所得控除」も適用される。
勤め人の場合、この合計額103万円を超えた分に所得税がかかる。例えば年収が105万円なら2万円分に課税されるが、納税額は1000円(税率5%)と比較的少額だ。
それでもパートで働く主婦・主夫らは、かつて103万円を基準に適用されていた38万円の「配偶者控除」を意識して労働時間を抑えがちだ。2017年度改正で配偶者が150万円まで働いても同額の控除が受けられるよう見直されたが、配偶者手当の基準が103万円に設定されている企業もあり、「心理的な壁」が残っている。
ただ、19歳以上23歳未満の学生らがアルバイトなどで103万円を超えると、生計を共にする親の手取り収入も減る問題が生じる。親が63万円の「特定扶養控除」を受けられなくなるためで、それを避けようとして働くのを控えてしまうと国民民主は指摘。特定扶養控除の基準も引き上げるよう訴えている。
社会保険料の負担が発生する「106万円の壁」と「130万円の壁」は自公両党が衆院選の公約に見直しを盛り込んだ。一定要件の下で年収106万円以上になると厚生年金・健康保険に、130万円以上で国民年金・国民健康保険に加入し、保険料を支払うことになる。
将来受け取る年金が増えるなどメリットはあるが、短期的には負担額が年収増を上回る可能性が生じる。このため政府は昨年10月、これらの壁を意識せずに働けるよう、賃上げなどに取り組んだ企業に助成金を支給するなどの支援を始めた。
厚生労働省は、厚生年金の加入要件106万円の壁を解消する関連法案を来年の通常国会に提出する方向で調整に入った。立憲民主党は130万円の壁を突破して手取りが減った分を給付金で補う法案を国会に提出するなど、103万円以外の壁解消に向けた議論も活発化している。
[時事通信社]
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