クマ被害防止へあの手この手=目撃情報集約、AI活用も―昨年多発の秋田・岩手
クマに襲われる被害が昨年全国で多発したことを受け、自治体で目撃情報の集約や、人工知能(AI)を活用した市街地への侵入防止の取り組みが進んでいる。今秋のクマの目撃数は昨年よりも少ないが、担当者は「増えた場合でも被害を防止できるよう取り組みたい」と話す。
2023年度の人身被害が70人と、全国で最も多かった秋田県。県は7月から、出没や被害があった場所をオンライン上の地図に一元的に表示する新システム「クマダス」の運用を始めた。市町村が入力し、イノシシやシカに関する情報も提供する。目撃者が直接投稿することも可能で、信ぴょう性を職員がチェックして反映する。
閲覧件数は10月末時点で約29万8000件、出没情報をメールで通知する機能を利用する人も約2900人に上った。県自然保護課の担当者は「場所や期間を指定して情報を見ることができるのが特長。閲覧数が多いのは昨年の被害の大きさから、クマへの関心が高まっていることが背景にあるのではないか」と話す。県は今後、過去のデータも順次反映させ、出没傾向の分析に役立てる考えだ。
昨年度の被害者数が49人と秋田に次いで多かった岩手県。市街地でのツキノワグマ出没が問題となっている花巻市は、移動経路となる川沿いなどにAIを活用したカメラの設置を進めている。カメラの近くを通った動物の熱に反応して自動撮影し、AIが「クマ」と判別すると担当職員のメールに画像が送られる。画像を基に市職員や地元猟友会の会員が現場に行き、爆竹による追い払いや捕獲を実施している。
10月末までに、市内19カ所計34台のカメラを設置した。市農村林務課の佐藤要課長補佐は「市街地から離れた場所でのクマ出没も確認できるようになった。早期に追い払うことで市街地への侵入を防げている」と一定の効果が出ていると話す。昨年に比べ今年のクマの出没数は少ないが、「今後カメラから得た情報を分析し、出没が多くなった時により効果が出せるようにしたい。人身被害を防止していきたい」と意気込んだ。
[時事通信社]
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