大腸の右側に異物排除の働き=小腸と似た機能、遺伝子解析結果―がん新治療法期待・国立センターと阪大
大腸がんは左側の肛門寄り(下流)にできる例が8割を占め、右側の小腸寄り(上流)にできる例が少ないのは、右側では免疫を担う小腸と同様にがん細胞を含む異物を排除する機能が強いためだとみられることが分かった。国立がん研究センターと大阪大の研究チームが8日発表した。
胎児期の消化器は前腸、中腸、後腸に分類され、中腸から小腸と右側大腸、後腸から左側大腸が形成される。成長後もこの違いが引き継がれることが遺伝子解析で確認された。
小腸は飲食物から栄養を吸収する役割が知られるが、微生物などの異物を排除するために免疫機能が強く、小腸がんは極めて少ない。大阪大の谷内田真一教授は「小腸の免疫システムを活性化させてがん化を防いだり、がん細胞を退治したりする新治療法の開発が期待される」と話している。
同センター中央病院の斎藤豊内視鏡科長らは、大腸の内視鏡検査で異常がなかった健常者と大腸がんが見つかった患者を対象として、大腸のさまざまな部位のほか、小腸の最下流に当たる回腸末端の組織サンプルを採取。働いている遺伝子を網羅的に解析して比較した。
その結果、大腸の左側では水分吸収を担う遺伝子群が働くのに対し、右側では異物を排除する遺伝子群がよく働くことが判明。大腸がん患者では一見正常に見える部位でも遺伝子の働き方が健常者と異なり、「未病状態」だと推定された。
さらに、回腸末端では免疫を担う白血球の一種、T細胞を活性化させる遺伝子群が働くが、大腸がんが進行した患者では異常な働き方になっていた。
谷内田教授は「日本人のがんは大腸が最も多い。未病状態を健康に戻す先制医療が重要だ」と指摘している。論文は国際的ながん専門誌モレキュラー・キャンサーに掲載された。
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