摘発対象拡大、経済・言論の足かせに=中国、反スパイ法施行10年
【北京時事】中国でスパイ行為を取り締まる「反スパイ法」が施行されて1日で10年。改正によって摘発対象行為の範囲は拡大し、恣意(しい)的な運用への懸念は強まる一方だ。外国人の拘束も相次いでおり、「中国離れ」の一因となっている。
「空港に到着してから、ずっと当局者の監視が付いた」。昨年夏の改正反スパイ法施行直後、中国に出張した日本の専門商社の男性社員は、そう振り返った。勤務する企業は、中国政府が重視する産業と関係がある。「行動を怪しまれないよう注意したが、怖かった。もう中国に行きたくない」と話す。
反スパイ法の施行以降、違反容疑などで少なくとも17人の日本人が拘束され、アステラス製薬の男性社員ら5人が現在も拘束されている。日本の大学に勤務する中国人教授が、一時帰国中に摘発されるケースも増えている。
今年10月29日には、韓国人男性が拘束されていることも明らかになった。相次ぐ外国人拘束で「中国への赴任希望者が減っている」(欧州企業関係者)という声も多く、外国企業が中国でのビジネスに二の足を踏む大きな要因となっている。
反スパイ法は、中国国内で言論統制の道具の一つにもなっている。スパイ摘発を担当する国家安全省は2023年12月、「中国経済が衰退する」といった言論を取り締まりの対象とすることを示唆。国内では低迷する経済状況を客観的に分析する記事が減り、「中国の知識人は、ますます物が言えなくなっている」(外交関係者)状況だ。
日本をはじめ各国の政府や経済界は繰り返し懸念を示しているが、習近平政権が応じる気配はない。共産党による統治体制の強化を図る習政権は、あらゆる分野で安全保障を強化する「総体的国家安全観」を表明。15年には国家安全法、今年5月には国家機密の管理を厳格化する改正国家秘密保護法を施行しており、「スパイ防止」をさらに徹底する構えだ。
[時事通信社]
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