若年黒人男性、民主離れか=トランプ氏に経済復活期待―激戦の南部ジョージア州・米大統領選
11月の米大統領選の行方を左右する激戦州の一つ、南部ジョージア州。人口の約3割を黒人が占め、全米でも有数の割合だ。伝統的に民主党を支えてきた黒人有権者だが、そのうち若年男性の支持離れが進みつつあると分析する調査もある。若い黒人男性の動向は、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の対決に影響を及ぼす可能性がある。
◇「MAGA・ブラック」
人口約30万人の4割近くが黒人のジョージア州チャタム郡。トランプ氏は9月下旬に中心都市サバンナで集会を開いた。気温30度を超え、強い日差しにさらされる中、会場となった市民センターには多くの支持者が集まり、会場外には入り切れなかった人々があふれた。
トランプ氏の演説が終わり、会場から出てきた聴衆の中で、「MAGA・ブラック」と記されたTシャツを来た黒人男性がひときわ目を引いた。「MAGA」はトランプ氏のスローガン「米国を再び偉大に」の略。地元でDJをしているというこの男性(35)は「経済を立て直し、雇用を生み出すことを期待している」と強調した。
会場に駆け付けたスティービー・ジェイティービーさん(46)も、サバンナで衣料品店を営む黒人男性。あらゆる物の価格が高くなったと嘆き、「彼なら米国にビジネスを取り戻すだろう」とトランプ氏の復権に期待を寄せた。
◇インフレが直撃
「全米黒人地位向上協会(NAACP)」が8月に黒人有権者を対象に行ったオンライン調査によると、50歳以上のハリス氏への支持率は76%で、トランプ氏の7%を圧倒。ただ、50歳未満ではハリス氏への支持は53%にとどまり、トランプ氏の19%と差が縮んでいる。50歳未満の男性に限ると、トランプ氏の支持率は26%に跳ね上がる。
重要課題としては、76%が「経済状況」を挙げてトップとなり、50歳未満の男性の間では82%に達した。バイデン政権下で進行したインフレや住宅価格の高騰が黒人の若年男性を直撃しているとみられる。
◇「共和から民主」の動きも
「ホワイトハウスから連絡だ。少し待ってくれ」。ジョージア州アトランタで不動産会社を経営するオマール・アリさん(44)はインタビュー直前にこう述べ、ハリス陣営関係者と電話で話し始めた。
アリさんは無党派を掲げる特別政治活動委員会(スーパーPAC)「正義、平等と経済(JEEPAC)」のトップを務める。同団体は政府などに黒人経営者らの支援を要求しており、約5万人のメンバーを抱える。2022年の州知事選では共和党のブライアン・ケンプ氏を支持し、勝利に貢献した。
しかし、アリさんは今年9月下旬、今回の大統領選でハリス氏を支持すると表明した。民主党に乗り換えた背景について、ハリス陣営が「黒人の中小企業を支えてほしいという私の主張を真剣に受け止めたからだ」と説明する。
アリさんは「われわれの声は黒人社会で大きな重みを持っている」とJEEPACの実力に自信を示す。開票日まで投票先を決めていない黒人有権者への働き掛けを強める考えだ。(アトランタ=米ジョージア州=時事)
[時事通信社]
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