2024-10-08 17:59社会

補償法成立、周知が課題=識者「ワンストップの窓口を」―強制不妊

 旧優生保護法を違憲とした最高裁判決を受け、強制不妊手術の被害者に1人1500万円を支払うことなどを定めた補償法が成立した。旧法下で約2万5000件の手術が実施されたとされ、今後、被害者らに補償法の内容をどう周知し、実際の請求につなげていくかが課題となる。識者は「誰一人取り残さないよう、ワンストップの申請窓口を国が設置すべきだ」と提言する。
 2019年に成立した救済法は被害者本人に一時金320万円を支給すると定めた。しかし、「手術をした過去を思い出したくない」「家族に伝えていない」といった被害者の声もあり、プライバシー保護の観点から個別通知に関する規定は盛り込まれなかった。請求件数は伸び悩み、一時金の認定者数は今年8月末時点で1129人にとどまっている。
 今回成立した補償法で、個別通知は都道府県に委ねられることになった。補償金の請求期限は施行日から5年で、この間に十分な周知活動をして被害者らからの請求につなげたい考えだ。
 補償法では人工妊娠中絶の被害者も新たに救済対象に含められたが、手術痕が残らず、公的記録が少ないため認定が難しいとされる。このため各地の弁護士会が、客観的資料の整理や陳述書の作成などをサポートする仕組みを構築する予定だ。
 立命館大の松原洋子教授(生命倫理)は「請求する人が安心できるよう、国がワンストップの申請窓口を設置し、弁護士がサポートする体制が望ましい」と話す。個別通知についても「都道府県任せにせず、国が基準やガイドラインを作ることが必要だ」と指摘した。
 原因の究明と再発防止に向けた取り組みも急務だ。訴訟の原告側と国が先月調印した基本合意書には、偏見や差別の根絶に向け、関係府省庁と原告団らの間で定期的な協議の場を設けることが盛り込まれた。政府は今後、差別解消のための行動計画を策定する方針を示している。 
[時事通信社]

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