欧州で復活の兆し=イスラム過激派テロ―SNSで若者「教化」・ガザ衝突1年
【ベルリン時事】欧州で下火になっていた「イスラム国」(IS)などイスラム過激派組織の影響を受けたテロに復活の兆しがある。訓練された戦闘員ではなく、「TikTok(ティックトック)」などのSNSを通じて「教化」されたとみられる若者の凶行が目立つ。イスラム組織ハマスとイスラエルのパレスチナ自治区ガザでの衝突が始まって7日で1年。専門家は「過激派は進行中の中東の紛争を利用して勢いづいている」と警告している。
8月8日、ウィーンで米歌手テイラー・スウィフトさんのコンサートが、テロの標的になったとして中止された。ウィーン近郊で両親と暮らす19歳の男が逮捕され、自宅から手製の爆発物や凶器が見つかった。
現地メディアによると、男はISに忠誠を誓っていたが、モスク(イスラム礼拝所)には通わず、SNSで「教義」を説く説教師らをフォローしていた。両親はイスラム教徒が多い北マケドニア北西部出身で、息子の異変には気付かなかったという。
約2週間後、ドイツ西部ゾーリンゲンで、難民施設で暮らしていたシリア人の男=当時(26)=が祭りの参加者を刃物で無差別に死傷させる事件が起きた。ISは犯行声明を出したが、具体的なつながりは不明。治安当局の監視対象から漏れていた。
「爆発物満載のトラック、愛のある別れ、母さん、悲しまないで、あなたの息子はアラー(神)の下へ旅立つのだから」。ISを賛美する歌がSNS上で拡散している。独公安部門は「イスラム主義のティックトック化」と呼び、警戒を強める。
国連のIS監視活動に携わったハンス・ヤコブ・シンドラー氏は、「説教師のいるチャットグループの参加者が狙われる。閉鎖的なグループに移ってさらに過激化する」と解説する。利用者の好みに合った情報を提供するSNSの仕組みが、思想を極端にする一因にもなっている。
今月2日には、デンマークの首都コペンハーゲンのイスラエル大使館付近で爆発が起き、16歳と19歳のスウェーデン人が関与したとして拘束された。イスラエルと対立を深めるイラン政府の扇動を疑う見方もある。
[時事通信社]
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