停戦調整の傍ら、殺害準備=ナスララ師空爆、米にも作戦伝えず―イスラエル
【エルサレム時事】イスラエル政府は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの一時停戦を訴えた米国や日本などの提案について文言調整を行う一方で、ヒズボラの指導者ナスララ師殺害の準備を周到に進めていた。イスラエルや米国のメディアが、殺害作戦の遂行に至る内幕の一端を伝えた。
報道によると、イスラエルのネタニヤフ首相やガラント国防相、ハレビ軍参謀総長、対外情報機関モサドのバルネア長官らを集めた25日の会合で、ナスララ師殺害が議題となった。「殺害すべきだ」との意見が大勢を占める中、ネタニヤフ氏はその日の決断は見送り、翌26日に国連総会一般討論演説のため米ニューヨークへ向かった。
イスラエル時間の26日夜に閣議が招集され、作戦の条件が整えばネタニヤフ氏とガラント氏に判断を一任することで一致。ただ、パレスチナ自治区ガザの軍事作戦への悪影響を懸念する閣僚もいたという。
27日午後、レバノンの首都ベイルート郊外地下のヒズボラ本部にナスララ師が居合わせているとの情報を得たハレビ氏は、ガラント氏に「必要なものはそろった。ナスララは地下にいる」と説明。国連演説を控えたネタニヤフ氏に電話で空爆を進言し、同氏も承認した。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によれば、「ほんのわずかな絶好の機会」を逃さぬよう、本部空爆では数分間で80発以上の爆弾を使用。ヒズボラのメンバーが翌28日午前にナスララ師の遺体を確認した。ネタニヤフ氏は28日の声明で「ナスララが生きている限り、ヒズボラは奪われた力をすぐに取り戻してしまう」と殺害を正当化した。
米政府は、空爆に関与せず事前通告もなかったと表明。停戦を促していただけに、米政府内には「欺かれた」と憤りの声もあるとイスラエルのメディアは伝えている。
[時事通信社]
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