大の里、未来背負って=番付の権威示す存在に―大相撲・駆け上がる大器(下)
横綱照ノ富士の休場が目立ち、琴桜、豊昇龍の両大関の存在感はいまひとつで番付の権威も揺らぎつつある中、大の里が重責を担う。大関を30場所務めた貴景勝は引退。安定感が芽生え始めた大器には、上位陣の威厳を保つ役割が求められる。
尊富士が110年ぶりとなる新入幕優勝を遂げた3月の春場所で、千秋楽まで賜杯を争ったのが幕内2場所目だった大の里。最近は新顔が一気に活躍する場所も多い。芝田山親方(元横綱大乃国)は「(上位陣が)しっかりしないといけない。番付の伝統、文化、格式が崩れてしまう」と述べ、危機感をあらわにする。
満身創痍(そうい)の照ノ富士は引退と背中合わせとも言える土俵が続く。昨年大関に昇進した霧島は1年で転落し、御嶽海、正代らも長くはその座を維持できなかった。横綱、大関と関脇以下との差が決して大きくないことをうかがわせる。
卒業時期が重なる春場所の新弟子検査。今年受検したのは現行制度が定着した1973年以降で最少の27人だった。最多は「若貴ブーム」に沸いた92年の160人。絶対的な存在が生まれにくい背景には、力士減少に歯止めがかからない現況も影響していると思われる。
過渡期を迎える中、次の横綱として将来を嘱望される。横綱審議委員会の山内昌之委員長は「その候補に違いなく、片りんも見せている」。年6場所制となった58年以降、直近3場所で2度優勝して大関になるのは大の里だけ。期待も増す。
天性の馬力。ものが違うと思わせるだけの圧勝も光る。「たくさん稽古し、上に向けて頑張りたい」と大の里。一時的に騒がれて終わる器ではないはず。角界の未来を背負うべき看板力士が産声を上げる。
[時事通信社]
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